私は呪われている

『私は呪われている』橘外男戎光祥出版ミステリ珍本全集06〉

著者得意の化け猫小説、56年ぶりに復活! 圧倒的な筆力で怪異の世界を描き続けた直木賞作家の真骨頂! 幻の少女向けホラー「双面の舞姫」他3篇を併録!

表題作の「私は呪われている」はイマイチはまらなかったなぁ。
個人的に、橘外男に求めてるのは怪談ではなくて、冒険譚、もしくは現実世界(珍説がベースにあるにしても)の物語。
俺が読みたいグロテスクさが、怪談だとかなり薄いんだよね。


それに比べて、併録されてる「双面の舞姫」がかなり好みの作品。
「青白き裸女群像」の少女向けリライトなんだけど、十分に面白い。少女が行方不明になって十数年後に見つかるが、その体は病で生きながらに腐っていた……という物語の開幕から、妖怪のような男の不気味なアトリエ、大泥棒の逮捕、無関係かと思われたダンサーの正体、と畳み掛けるように展開し、それらが収束していく様は見事。題名も最後まで読んで納得できる形だし。個人的には、男装の麗人の方が理にかなってる気がするけど。


「人を呼ぶ湖」も始まりこそは怪談だけど、水草の密林とそこに漂う水死体のビジュアルはなかなかのもの。
五絃琴の音とも物理的理屈をつけて欲しかったな。


橘外男の改筆癖を「ムズターグ山」「魔人ウニ・ウスの夜襲」で確認できるのも面白い。馬頭人身の方が不気味でいいと思うんだけどなぁ。