Predestination



『プリデスティネーション』鑑賞


SF小説の大家ロバート・A・ハインラインによる短編小説「輪廻の蛇」を、イーサン・ホーク主演で映画化。時間と場所を自在に移動できる政府のエージェントが、凶悪な連続爆弾魔を追うためタイムトラベルを繰り返す姿を描いたSFサスペンス。1970年、ニューヨーク。ある流れ者によって不遇の道を歩まされたという青年の身の上話を聞いた酒場のバーテンダーは、自分が未来からやってきた時空警察のエージェントであることを明かす。青年の人生を狂わせた流れ者への復讐のチャンスを与えるため、バーテンダーは1963年にタイムスリップし、当時の青年をエージェントに勧誘するが……。監督は「デイブレイカー」でもホークとタッグを組んだピーター&マイケル・スピエリッグ兄弟。

ロバート・A・ハインライン「輪廻の蛇」*1を映画化。


イーサン・ホーク&スピエリッグ兄弟という、『デイブレイカー*2のガッカリトリオということでほとんど期待せず。
それでなくても、「輪廻の蛇」はあんまり好きじゃないんだよね。難しいパズルを完成させるためだけに、それにあったピースを削りだしてるような印象で。


ところが! これが結構なアタリ!


以下、ネタバレ。最低限、原作既読の方推奨


基本、原作と一緒(セリフはそのまま使われてる)なんだけど、映画の前半を費やして〈未婚の母〉の人生が語られているため、キャラクターが血肉を備えており、原作に感じた無理矢理感が非常に薄い。


映画化に際しての最大の改変は、物語の軸が連続爆弾魔を追うというしっかりしたストーリーがあること。
〈未婚の母〉の人生及び憎き男、連続爆弾魔の正体が推進力になって映画を進めていくんだけど、これがちゃんと原作のキモを残している、というよりもしっかり強化しているのが素晴らしい。
そもそも、爆弾魔もとってつけたわけでなく、原作では詳細不明の〈1972年の大失敗〉を膨らませてるんだよね。


爆弾魔との戦いによって、〈未婚の母〉とバーテンダーの顔が違う理由になっているのも上手いし、何より、爆弾魔の存在そのものが、航時局の存在理由にもなっているフシがあり、そのループ感もたまらない。
〈未婚の母〉にとって、憎い男が自分だったと目の当たりにして愕然とするように、バーテンダーもまた、爆弾魔が自分だったと気づいてしまうラストは、映画としても、ループものとしても、構造が巧み。
あそこまでやったら、もう一息、局長も同一人物にしてほしかったなぁ、というのは贅沢? 顔がイーサン・ホークと似てるから、期待してしまったw


舞台は原作どおりに1970年代にする必然性はないんだけど、タイムマシンのシリンダーとレトロフューチャーをてらいなくやるためだと納得w


『ルーパー』*3の糞っぷりが際立つ作品。オススメ