The Troop

スカウト52 (ハヤカワ文庫NV)

スカウト52 (ハヤカワ文庫NV)

『スカウト52』ニック・カッター〈ハヤカワNV1318〉

沖に浮かぶ小さな島へ、指導員に率いられたボーイスカウト第52隊の五人の少年たちが、キャンプにやってくる。島で二日間を過ごすのだ。だが、無人のはずの島に一人の男が現われた時から、悪夢が始まった。奇怪なまでに痩せ細ったその男は、食欲に取り憑かれ、食糧ばかりか草や土までを貪り食う。やがて、狂ったように暴れ、無線機を破壊し、昏倒した男の体からは……14歳の少年たちを襲った恐怖を描く正統派ホラーの傑作

まず注意。虫がダメな人はダメかもしれないw


クリーチャーは出し惜しみせず、その正体も早々に明かされる。
よくあるパターンなのも、作者が描きたいのは『バイオハザード』ではなく、別のものであるがゆえのステロタイプな設定。


もちろん登場人物としてはそのクリーチャーが脅威だけど、しかし、この小説のホラーとしての構成は、クリーチャーそのものではなく、それによってあらわになっていく少年たちの真の姿。
ビジュアル的には『スタンド・バイ・ミー*1や『グーニーズ*2で補完できる感じなんだけど、内容的には、もっとサイコ寄りにした『蝿の王*3
肉体の変容は著しいけど、それ以上に、公然と異界と化した島でそれまでのペルソナを剥ぎとられた少年たちの行動はまるで別人。
そこで臆病になるものもいれば、英雄的行動を見せるものも。そして何よりの敵は怪物となった少年。


また、この作品はホラーとしてはエピローグがかなり長い。
地獄からの脱出しても、その後の人生でも悪夢は続き、彼は島での出来事を懐かしむ……