The Double



『嗤う分身』鑑賞


文豪ドストエフスキーの名作「分身」の舞台を近未来的世界に置き換え、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ&「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ共演で映画化した不条理スリラー。不器用で気の小さい青年サイモンは、向かいのアパートで暮らすあこがれの同僚ハナを望遠鏡で覗くことだけが楽しみの孤独な生活を送っていた。そんなある日、サイモンの職場に彼と瓜二つのジェームズが入社してくる。しかもジェームズは、サイモンよりはるかに優秀で……。監督は「サブマリン」のリチャード・アイオアディ。「ザ・ダブル 分身」のタイトルで2013年・第26回東京国際映画祭コンペティション部門で上映された。

未来世紀ブラジル』に通じる、ゴミがあふれているわけではないけど、あらゆるものが使い古され、古ぼけた、疲弊した全体主義的世界、なビジュアルにまずやられる。


不条理=「ムンクの叫び」という認識のされ方があるけど、「ムンクの叫び」は世界没落体験の表現していると言われている。
『嗤う分身』もまた、その雰囲気がよく表されている。
間違ってるかもしれないけど、不条理は意味不明ではなく、なぜか全てが自分に意地悪している(と思える)ものだと思うんだよね。
それを非常によく体験できた作品。


そして、突如流れる昭和歌謡! それがまたシュールなシチュエーションにはまってるんだよね。


顔形、服装までも全く同じ分身をジェシー・アイゼンバーグが演じる。
見分けつかないはずなのに、仕草や立ち振舞でちゃんとどっちがどっちだかわかる演技が素晴らしい。
終盤、オチにもつながるんだけど、その雰囲気に見分けがつかなくなっていくのも上手いなぁ。