ONCE THE SHORE

かつては岸 (エクス・リブリス)

かつては岸 (エクス・リブリス)

『かつては岸』ポール・ユーン〈白水社エクス・リブリス〉

韓国南部の架空の島ソラに暮らす人々、日本からの移民、アメリカ兵たちのささやかな人生。静謐な筆致で奥深い小宇宙を作り出す、韓国系アメリカ人作家による珠玉の連作短篇集。


・「かつては岸」
・「残骸に囲まれて」
・「炎を見つめる顔」
・「彼らに聞かれないように」
・「木彫り師の娘」
・「わたしはクスノキの上」
・「そしてわたしたちはここに」
・「イドーにかかるランタン」

架空の島を舞台にした、韓国系アメリカ人作家の連作集。


韓国の小島が舞台だということははっきりわかるし、洞窟や漁船、リゾート地といった南の匂いがする装置が設置されているのもかかわらず、どこか山水画に似た静謐さが備わっている。


同じ島を舞台にしただけで、それぞれの物語間につながりはなく、連作集としての楽しみは薄い。個人的には、人名や時間がクロスオーバーする方が趣味。


太平洋戦争中に孤児として日本から渡ってきた女性が、朝鮮戦争野戦病院でかつての幼なじみに出会う「そしてわたしたちはここに」がずば抜けて印象的だったんだけど、やはり評価が最も高い作品なのね。