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オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

『オマル―導きの惑星―』ロラン・ジュヌフォール〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ5014〉

総面積は地球の5000倍にもおよぶ巨大惑星オマル。そこではヒト族、シレ族、ホドキン族の3種族が暮らしていた。何世紀にもおよぶ壮絶な抗争の未、65年前に結ばれたロプラッド和平条約により、いまはかろうじて平和が保たれていた。そんな3種族共同統治区プラットフォームジャンクションの大港に停泊中の巨大飛行帆船イャルテル号をめざし、今、種族も年齢も出自もまったく異なる6名の男女が向かっていた。彼らが手にするのは謎めいた卵の殻と22年も前に購入されたチケット乗船券。彼らの目的は? そしてイャルテル号の行く手には? フランス有数のSF賞、ロニー兄賞受賞に輝く壮大なSF叙事詩

ふむふむ。聞いたところによると『ハイペリオン*1はこういう感じなのね(相変わらず未読)


二冊目が予定にあったので、まとめて読もうと思ったら、別に続きではなく、本書よりも何世紀も前の話らしいので、8月を前に着手。


ヒト族、シレ族、ホドキン族の3種族が暮らす、地球の5000倍の巨大惑星オマル。
謎の卵の殻と22年前に買われた飛行船のチケットによって集められた、種族も出身も異なる6人の男女。
彼らを集めたのははたして何者? なんの目的で? 


ヒト族以外は、姿も生態も名前も異形で、いきなりそんな種族が主人公たちと言われても覚えられんよ、と思いきや、これがかなりすんなりと頭に入ってくる(短篇*2読んでたからかもしれないけど)。


物語は、6人が目的地に向かう様子を縦軸として、それぞれが語る人生と旅によって約束されている「望むもの」が横軸として織りなされていく。
このそれぞれの物語が面白く、それがオマル文化やシレ族とホドキン族の紹介にもなっていて、全く異質の世界を入りやすい。
また、その語っていく順番も巧みで、一番手は、ヒト族だけどアウトサイダーのアレサンデル。彼が読者と異世界の橋渡しになる。二番手に同じくヒト族のカジュルで一息つき、三番目にホドキン族のアメス、次がシレ族のハンロルファイル、五番目にシレ族の突然変異シカンダイルル、最後がキャラクター的に21世紀人にも受け入れやすいシェタンの人生が語られ、オマルに順応していったところで、主人公たちにとっても異質な目的地と黒幕が披露される。


ただ、それらが濃い分、後半はちょっと駆け足な感じ。
オマル世界の正体は続編でも良かったんじゃないかなぁ。まぁ、続きが確定してなかった(かどうかは知らないけど)なら、書きたいアイデアは書いちゃったほうがいい気もするけど、結果論としては必要性は低いような。『ベルセルク』第83話って感じw
でも、正体を語ることによって、いくらでも話はできますよ、と言ってるようにも思えるか。


初めの方に出てくるタジンファイウやファルミエは面白いキャラなのに、そこだけで使い捨てっぽいのはもったいないなぁ。
それだけでなく、イャルテル号も主人公たち以外の人が感じられないし、姿を見せない船長とか、六人を書くので手一杯な感じがするのが残念。
これだけで、十分大作だけどね。


珍しいフランスSFの翻訳だけど、フランス!というのはこれといって感じられなかった。むしろ、最近訳される海外SFの中でもスケールは巨大で、物語世界を楽しめる。
個人的には、SFと言うよりは、ファンタジーっぽい印象かな。ビジュアルもスチームパンク風に再生。実際、テクノロジー超古代文明的だしね。


ちなみに、ロニー兄賞のロニーは『人類創世』*3の原作者