JOLIES TENEBRES

かわいい闇

かわいい闇

『かわいい闇』作:マリー・ポムピュイ/ファビアン・ヴェルマン 画:ケラスコエット〈河出書房新社


借りぐらしのアリエッティ*1+『蝿の王*2
もしくは
こえだちゃん*3 meets 『ネクロマンティック』*4!(わからないなら、検索しないように)


以前、ガイマン賞関係のトークショーで紹介されていて、気になっていた作品。小人さんたちがワイワイ森のなかで暮らす話……ではあるんだけど、思ってた以上に凄い。


開いて1ページ目。
ちょっとダークな雰囲気の表紙とは大違いの、メルヘンというか、直球で幼児向け絵本的な絵柄。
主人公と思しき女の子が、かっこいい男の子とお茶会をしている。
しかし、そこに異変が!
彼女たちがいる世界は……


なるべくなら、何も情報を仕入れないで、ギョッとして欲しい。
知っててもギョッとしたからw


ディフォルメされた絵が可愛いにもかかわらず、生理的嫌悪感はかなり強烈で、面白いから虫の足をむしってしまうような子どもならではの残虐性にフラッシュバックを起こす人も少なくないのでは。
無垢、無邪気を土台とした、善意、悪意、狡さ、残酷さが披露され、サバイバルも含めて、すべてがおままごと。
おままごとゆえの考えなしが、また悪い方向へつながっていく。


今年の必読ガイマンだと思うけど、結構グロいので注意。
個人的には、鳥の巣に潜り込んで、親鳥から餌をもらおうとする描写がきつくて……


以下ネタバレ
大きさ、性格様々な小人たちの正体は何かということなんだけど、死んだ少女の魂なり、性質なりが分割化されたものなんだろうね。
主人公オロールがおそらく少女の性格を最も受け継いでいて、怖がりの小人が恐怖心を司っている。


彼女に何があったのかは語られないけど、怖がりが見る悪夢から推測すると、殺されたっぽいよなぁ。
個人的には、巨人(彼女たちから見て)の男が犯人と読んだ。中盤の登場は遺体を確認しに来た描写で、家に人形があるのもなんか怪しい。
作者の言葉を読むと、彼の正体もどのようにも解釈できるようにしているみたいだけど。


悲劇とグロテスクから発端だけど、オロールの正統派ビルドゥングス・ロマンとして読むことができる。
世間知らずで善良な彼女が、失恋、裏切りを体験し、罪を犯し、獣性を帯び、復讐を遂げて、彼女だけの安息の地を見つける。
この絵柄で、毛皮を纏わられると、『蝿の王』の野生化よりも強烈。


容赦無い残酷さは、ありとあらゆる存在は必ず死ぬし、それがいつどうやってかもわからない、という虚無感を表しているようにも思える。