How to Live Safely in a Science Fictional Universe

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』チャールズ・ユウ〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ5015〉

「僕」はタイムマシンの修理とサポートを担当する技術者で、個人用タイムマシンに乗って時間のはぎまを漂っている。電話ボックス大の空間で暮らす僕にとって、UIのタミーと非実在犬のエドはかけがえのない存在だ。家族は父と母の三人だけど、母は同じ時間を繰り返すループ・サービスに入ったきりだし、ガレージでタイムマシン開発をしていた父は失踪中で、時空のどこにいるのか不明だ。あるとき、修理工場でタイムマシンから僕が降りてくるのを目撃した僕は、とっさに「もうひとりの自分」を撃ってしまった!?最悪のパラドックスに陥った僕は……。アメリカ小説界注目の俊英の家族小説を、円城塔の翻訳で贈る。

毎度のことながら、訳者の著作は未読(短篇を一作読んだかな……)。そんなわけで、作者との親和性や文体はまるでわからないんだけど、この雰囲気は嫌いじゃない。


非実在美少女と非実在犬ちゃんの物語(ウソ)


タイムマシンが出てくるけど、SFではないよなぁ。
大雑把に二通りの解釈ができると思ってるんだけど、字面通りにタイムマシンとタイムパラドックスが起きてしまったという読み方。
もう一つは、パラノーマルなことは全く存在せず、何かをタイムマシンに例えているという解釈。


個人的には、実は後者のほうが好きで、主人公は引きこもりかそれに近い状態で、過去を思い出しているという状態がタイムマシン。
鏡の中の自分が思っているよりも年取ってるのは、時間旅行の影響ではなく、めったに鏡を見ないから。
母親が、永遠にキッチンの一時間を永遠にループしているというのは、彼はその姿しか思い浮かべられないし、ご飯を作ってくれるから。老後の資金を食いつぶしているのも自分だと気づいているのかな。
自分殺しや失踪前の父を見に行くのは人生を客観的に見つめなおし、それを乗り越えていくためのイニシエーションで、ついに自分の部屋から出よう、という現状からの脱却。


まぁ、ホントにタイムマシンの話でも、本質は家族の物語、と変わらないけどね。