Generation"P"

ジェネレーション〈P〉

ジェネレーション〈P〉

『ジェネレーション〈P〉』ヴィクトル・ペレーヴィン河出書房新社

舞台はソヴィエト崩壊から1990年代までのモスクワ。嘗ての価値観が完全に崩壊した世界に放り出され、通りに建ち並ぶキオスクに雇われ人として職を得たタタールスキィは広告業界に転身し、コピーライターとなる。主な仕事は西側ブランドの広告をロシアのメンタリティに合ったものに変換するというものだった。驚くべき展開の果てにタタールスキィは奇怪な殺人儀式をへてヴァーチャル空間の新たな創造者として君臨し、メディアとして遍在することになる。

河出書房新社初のペレーヴィン


「ゴスプランの王子さま」*1や『恐怖の兜』*2と同様、神話をバックボーンにして、現代のテクノロジー(カルチャー)による地獄めぐりの物語。


ソローキンの文章が血肉や精液、腐臭など、過剰な生命活動を感じさせるのに対して、ペレーヴィンは『寝台特急――黄色い矢』*3の時にも同じことを書いたけど、型落ちした機械の匂いなんだよね。
それも、今作は、CMやニュースといった現実を写す鏡の業界を舞台にしているにもかかわらず、やはり野暮ったい。
主人公たちが請け負う仕事が、西欧メーカーのCMのローカライズという、まさにお下がり的なもの。ペレストロイカによって価値観が崩壊し、自国の誇るものもなくなってしまった。
強い「型落ち」感は作者も狙ってると思うんだよね。
今作では、人々が見ている真実でさえ虚像であり、全てを作り上げる虚像ならば型落ちもしない境地にまで達しいている。