NOS4A2

NOS4A2-ノスフェラトゥ- 上 (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- 上 (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- 下 (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- 下 (小学館文庫)

ヴィクトリア・マックイーンは八歳のときから、父にもらった自転車で家の裏の森にある屋根付き橋をわたり、遠く離れた場所や異界へ行けるようになった。十七歳のある日、母と喧嘩をして家を飛び出したヴィクトリアは自転車で〈橇の家〉に辿り着く。そこにいたのは、〈NOS4A2(ノスフェラトゥ)〉のナンバープレートを付けたロールスロイス・レイスに乗る老人――吸血鬼ならぬ連続児童誘拐犯の、チャールズ・タレント・マンクスだった。二〇一三年度ブラム・ストーカー賞最優秀長篇賞候補にノミネートされた、ベストセラー作家ジョー・ヒルのダークファンタジーが日本に上陸。
連続児童誘拐犯のチャールズ・マンクスに殺されそうになった記憶に苦しめられ、重度のPTSDを患ったヴィクトリアは、入院後、幼い頃に休暇を過ごした湖の家で息子ウェインと水入らずの日々を送っていた。それもつかのま、ヴィクトリアへの復讐に燃えるマンクスはウェインをさらい、ロールスロイス・レイスで彼の作り上げた王国(クリスマスランド)へ向かう。ヴィクトリアは息子をとりもどすため、満身創痍の体でバイク・トライアンフを走らせる。ベストセラー作家ジョー・ヒルが放つ、モダンホラーの傑作がここに完結!

ハートシェイプト・ボックス*1はあまり記憶に無いんだけど、『ホーンズ 角*2はモロにアメコミ的物語で、今作もアメコミネタが重要なアクセントになっている。アイアンマンの格好したコミコン常連の超肥満体の父に対して、そういうのに興味が無い息子が、ブルース・ウェインって名前だったら、そりゃ嫌だよなぁw


虐待や諍いから逃げ出した少女。生涯悩まされるPTSDや精神の傷によって敗残者とならざるを得ない犠牲者たち、とマジック・リアリズム的に読めないこともないけど、これはストレートに愛にまつわるダークファンタジーと受け取るべきだろうね。
一見、体にはまだ大きい自転車に乗り、〈近道橋〉を渡ることによって失せ物を見つけられる少女、というビジュアルに「少年時代の魔法」ものという印象を受けるけど、彼女が辿り着く先と、その後の人生は悲劇的。


あらゆる人間が愛を求め、真の愛情とは無償のもの。
子供の時に分かれてしまった父とヴィク。ヴィクとルー、その息子のウェイン。ウェインと祖母。孤独な司書のマギー。相手の為には、その身も投げ出す。特に、触れ合う相手を渇望し、自身の肉体と精神を傷つけてでもヴィクのために能力を使うマギーの姿は物語の象徴的なキャラクター。
それとは対照的に、ノスフェラトゥたるマンクスは、愛されているという錯覚と引き換えに生気を吸い取ってしまう。彼の手下のガスマスクマンは愛の代償に悪行に手を染める。


ヴィクがボロボロになった人生が無意味なものではなかったと証明する物語なんだけど、その証明たる愛する息子ウェインがそれに気づくという意味では彼が主人公といえるかも。
結婚もしていない両親、疎遠な祖父母ははるか昔に離婚。オタクな父に、精神を患っている母。バラバラな家族で、彼はマンクスの甘言になびいてしまう。
しかし、家族全員が自分を愛していることに気づき、クライマックスで自分の名前も受け入れるさまは、あとがきも読むと、ホラーの巨人である父の七光を嫌ってデビューしたジョー・ヒル自身と重ねあわせたくなってしまう。


長編三作目で、最長だけど、抜群のリーダビリティもあって、これが一番好きだなぁ。