Jodorowsky's Dune



『ホドロフスキーのDUNE』鑑賞


ホーリー・マウンテン」「エル・トポ」などでカルト的人気を誇る奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督が映画化に挑んだものの、実現に至らず失敗に終わった幻のSF大作「DUNE」。フランク・ハーバートの「デューン 砂の惑星」を原作に、サルバドール・ダリミック・ジャガーオーソン・ウェルズメビウス、H・R・ギーガー、ピンク・フロイドら豪華スタッフ&キャストをそろえながらも、撮影前に頓挫した同作の驚きの企画内容や製作中止に追い込まれていった過程を、ホドロフスキー自身やプロデューサー、関係者へのインタビュー、膨大なデザイン画や資料などから明らかにしていくドキュメンタリー。

撮影前に頓挫してしまったホドロフスキー版『デューン 砂の惑星』を、関係者のインタビューを中心に描いたドキュメンタリー。


冒頭、ニコラス・ウィンディング・レフンが、目の前でストーリーボードとホドロフスキーに語られたことよって、自分だけが唯一『DUNE』の観客だ、と言う。いや、我らも90分に圧縮された、この世界とは分岐した並行世界のSF映画史を幻視できるのだ。


先日のイベントでも、85歳とは思えないエネルギッシュな姿と語りを見せてくれたホドロフスキー監督だけど、それはこの映画でも思う存分味わえる。
『エル・トポ』*1ホーリー・マウンテン*2の成功で彼が目指したのは『デューン 砂の惑星』の映画化。それは人間や歴史を変革させるパワーを持った作品になるはずだった。
それを実現させるために彼が集めた魂の戦士たち。メビウスダン・オバノン、H・R・ギーガー、クリス・フォス、ピンク・フロイドミック・ジャガーデヴィッド・キャラダインサルバドール・ダリオーソン・ウェルズ……
完全に妄想にしか聞こえないんだけど、身振り手振りを交えたホドロフスキーの語りだと、実現可能なプロジェクトに聞こえてくるんだよね。「魂の戦士を集めてる、君が必要だ」って口説かれたら二つ返事でしょw


今でさえエネルギッシュなんだから、40年前は押して図るべし。当時関わった人の声を聞くと、ちょっと教祖っぽいんだよね。カリスマっていうのはこういうことなんだろうなぁ。
ちょっと驚いたのは、メビウスを目に止めたのは『ブルーベリー』*3を見てなんだよね。個人的にはあんまり『ブルーベリー』は好きではないんだけど、ホドロフスキーはその絵を見て自分のカメラだ!と思ったとか。
また、狂える哲人ホドロフスキーをしても、ダリは畏怖すべき怪人なのねw


詳細で分厚い資料集、ストーリーボードを作成し、映画会社を回る。どこでも歓迎されるが、ホドロフスキー監督の存在だけが厄介者をして扱われる。
結局、模型を作る寸前で映画は製作中止。
作中では会社がホドロフスキーの存在を恐れた、的なことを言ってるけど、まぁ、予算と上映時間(12時間とも20時間とも)が最大の理由だろうなぁ。


そのストーリーボードが、その後のSF映画に多大な影響を与えた……かどうかは当事者じゃなければ明言できないけど、少なくともSF的ビジュアルを大きく先取りしていたのは確か。
また、『エイリアン』*4ホドロフスキーによって、オバノンとギーガーが引き合わされていなければ(今の形では)存在しなかった可能性は高いかも。
ちなみに、ホドロフスキー先生は原作レイプ肯定派w(曲解してます)


そして、リンチ版『デューン 砂の惑星*5が公開され、それを観たホドロフスキー監督は……
とにかく、映画好き、SF好きは必見!


映画各社に配布されたストーリーボードのうち1冊は日本にあり、6/30まで渋谷パルコ ギャラリーXで展示されている。
15:30頃行くと、中身が見られるので是非。
出版してくれないかなぁ。SF映画ファンとBDファンは買うでしょ。