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剃髪式 (フラバル・コレクション)

剃髪式 (フラバル・コレクション)

ボヘミア地方ヌィンブルクのビール醸造所を舞台に、建国間もないチェコスロヴァキアの「新しい」生活を、一読したら忘れられない魅力的な登場人物たちに託していきいきと描き出す。「ビール醸造所で育った」作家が自身の母親を語り手に設定して書き上げた意欲作。

『厳重に監視された列車』*1に続く「フラバル・コレクション」第2弾。


若かりし頃の母親を語り手に、フラバルが生まれる前の街の様子が描かれる。


母=倍賞千恵子
父=前田吟
伯父さん=渥美清


と脳内補完。
まぁ、正直、倍賞千恵子は違うかな?という感じだけど、父と伯父さんはベストキャスティングだと思うw


他のフラバルの作品*2が、戦争や社会主義の影によって、グロテスクに変容し、笑うしかない物悲しい人々を描いているのに対して、建国間もないチェコスロヴァキアを舞台にしているためか、非常に明るい。「ラジオっちゅう凄いもんがあるらしいぞ」という感じで。
天真爛漫な母、生真面目な父、デタラメな伯父、を中心に、うるさい会長、愉快な職人、髪を切りたがらない床屋、と完全に人情ファミリーコメディ。


ほとんど神話的な母の長い髪を切ること=近代化、と小難しく読むこともできるけど、ビールと肉が美味そうなんだから、それでいいじゃない。