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『チョコレートドーナツ』鑑賞


同性愛に対して差別と偏見が強く根付いていた1970年代のアメリカでの実話をもとに、育児放棄された子どもと家族のように暮らすゲイカップルの愛情を描き、トライベッカやシアトル、サンダンスほか、全米各地の映画祭で観客賞を多数受賞したドラマ。カリフォルニアで歌手になることを夢見ながら、ショウダンサーとして日銭を稼いでいるルディと、正義を信じ、世の中を変えようと弁護士になったポール、そして母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコは、家族のように寄り添って暮らしていた。しかし、ルディとポールはゲイであるということで好奇の目にさらされ、マルコを奪われてしまう。

この邦題はホントにいいと思うんだけど、『バス男*1並にドーナツ食ってるシーンはないんだよねw
売店でチョコレートドーナツ売ればよかったのになぁ。


マイノリティがマイノリティというだけで踏み潰されていた時代。
ゲイのカップルと、ダウン症の少年による擬似家族が懸命に生き抜こうとする物語。
ささやかだけど、最良の幸せを送る三人だが、社会は個人の幸福よりも「常識」に重きを置き、彼らを離れ離れにしてしまう。
なんとか三人で暮らすために奮闘するが……


理解のない時代の、特殊な三人の物語ではあるんだけど、真の幸せと虐げられし者の慟哭は普遍性があり、三人の姿には自然と笑みがこぼれるし、あまりに情のない司法の仕打ちには憤りを覚える。
歌手を目指すルディの歌声がところどころに挿入されるんだけど、それがまた魂の叫びになってるんだよなぁ。


辛い展開が待っているけど、幸せな気分になれる一作。


これ、実話だと思ってる人多いかもしれないけど、実話成分はけっこう少ないんだよね。
脚本家の近所に住むヤク中の母親を持つ障害児を、ルディという男がたまに面倒を見ていた、という話を元にして20年前に書かれたものを映画化に際してリライトした作品。
だからといって面白さが減じるわけじゃないけど、逆に、実話じゃないということを知って『一杯のかけそば*2のように減点しちゃう人がいそうでイヤw


また、マルコを演じるのは実際にダウン症アイザック・レイバ。
俳優になりたかった彼のために、母親が障害者専門の俳優学校を設立したとか。
映画製作側から見ても、そういう場所はあったほうがいいよね。