SECOND VARIETY AND OTHER STORIES

米ソの全面戦争により地球全土は荒廃、わずかに残るのは戦い続ける両軍の兵士だけとなった世界。米軍が投入した“新兵器”によって戦局は大きな転換点を迎えていた……。「スクリーマーズ」のタイトルで映画化されたディック短篇中屈指の傑作である表題作、特殊能力を持った黄金の青年を描く「ゴールデン・マン」(映画化名「NEXT−ネクストー」)、本邦初訳短篇「戦利船」ほか、戦争をテーマにした全9篇を収録する傑作選


収録作品
・「たそがれの朝食」
・「ゴールデン・マン」
・「安定社会」
・「戦利船」
・「火星潜入」
・「歴戦の勇士」
・「奉仕するもの」
・「ジョンの世界」
・「変種第二号」

恥ずかしながら、ディックの長篇は数えるほどしか読んでないんだけど、灰色装丁が素敵なので、最近刊行されてる短篇集には着手している。それも今回で4冊目。
戦争をテーマとした作品を集めた短篇集。


相変わらず、放射能好きやな〜、とツッコみたくなるけど、作品の発表が50年代半ば、原水爆戦による世界の終わりが「漠然」、よりももっと確固たる感触を持った雰囲気が漂っていた頃。
その触れるような不安感をSFの表現として変換している。
ある日突然街が戦場になったら? 平和が極めて不安定なものだったら? 敵が自分たちの中に入り込んでいたら? それが見分けられなかったら? 
テクノロジーに立脚した話ではなく、不安そのものを描いているので、その不気味さは古びない。


この中では「変種第二号」の完成度が高く、内容も面白い。人間と見分けがつかない機械といういつものオブセッションもさることながら、題名になっている第二号はどんな形をしているのか、というミステリ的な要素も物語の推進力になっている。
『スクリーマーズ』*1は20年くらい前に見てるけど、けっこう原作通りに作られてたのね。


お約束の本邦初訳は「戦利船」。これ、面白くない? 大好きなんだけどw