EXILE'S VALOR

評議会の持ち込む見合いを退けたセレネイだが、偶然紹介された隣国の王子に心ときめかせた。王族の孤独を理解しあえる相手を得て、慰められる日々を送る女王。一方アルベリッヒは、城下で蠢く陰謀の一端を捉えることに成功する。周到に巡らされる罠の標的とは? 背後で糸を引くのは? 謎は解けぬままに、アルベリッヒは反撃の時を窺い、牙を研ぐ! 
肉親を失う痛みと孤独に耐えるセレネイをよそに、評議会は彼女の結婚問題で紛糾していた。武術指南役アルベリッヒは、彼女を救いたいと願いながらも、自身にできるのはヴァルデマール国ひいては女王に仇なす者を察知し、対処することだけと城下で諜報活動に勤しむ。そんな中、女王に対する負の感情を煽る者が現れた。背後関係を探るが……

『追放者の矜持』*1続編。


前作ではカース出身の〈使者〉として胡散臭い扱いを受けていたアルベリッヒだけど、今回は武術師範として尊敬され、一方、国の安寧を守るため、幾つもの変装で諜報活動に勤しむ姿が描かれる。


この違う顔、というのがこの外伝のポイント。


後の物語(〈ヴァルデマールの風〉以降)では、鉄面皮の鬼教官という印象しかないアルベリッヒが、生徒を本気で心配し、ステンドグラスを愛で、さらには恋人まで現れるという、全く知らなかった顔を見せてくれる。


また、それは、賢王セレネイにも言えて、彼女も若い頃は、恋に恋する聞く耳持たない乙女だったのねw
読者はこの後の歴史を知っているけど、それゆえに彼女のバカっぷりにキャラクター同様に振り回されることに。
彼女の夫も、末路は予想できるものの、そのダメっぷりにイライラさせられる。
エルスペスはある意味、どうしようもないできちゃった婚に近い誕生なのね。セレネイのエキゾチックな青年と愛し合いたいという希望は娘が継ぐことに。


陰謀を巡らす黒幕の正体は、やはりその最期も知ってるものの、理解者の仮面を被って、こんな早い段階から策を巡らせていたことがわかる。


また、スケート競技会や鏡の工房など、今まで見られなかったヴァルデマールの様子も描かれている。


二十年以上も読み続けているシリーズだから、あちこち抜け落ちてるんだけど、ミステってこの後も出てきてた?


中央公論新社版は今後も出るのかな? 出るなら『Brightly Burning』かな。