Captain America: The Winter Soldier



『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』鑑賞


マーベルコミック原作のヒーローアクション「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」(2011)の続編。マーベルヒーローが集結した世界的大ヒット作「アベンジャーズ」(12)から2年後を舞台に描かれる。ブラック・ウィドウやニック・フューリーらとともに、国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」の一員として任務の数々にあたっていたキャプテン・アメリカは、仲間であるはずのシールドから襲撃され、誰が本当の敵なのかわからないまま逃亡者となる。そんなキャプテン・アメリカを最強の暗殺者ウィンター・ソルジャーが追いつめるが、その姿は70年前に死んだはずの親友バッキー・バーンズのものだった。

S.H.I.E.L.D.って、戦後まもなく設立されたのに、21世紀まで誰も略称考えなかったの?


キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』*1の続編。
アベンジャーズ〉第2シーズンでは3作目だけど、内容的にはこれが『アベンジャーズ*2から直結の物語。


アベンジャーズ』はお祭り感が半端無かったんで冷静な判断は出来なんだけど、それを例外とするなら、シリーズの中では一番良く出来てるんじゃないかなぁ(『アイアンマン』*3も超好きなんですが)


シリーズ通して観ていた方が楽しめるのは当然だけど、これが初見でもわかるように作るのが、わかっていても難しいことだと思う。
冒頭のランニングシークエンスで、物凄いスピードで走っている男は超人で、なおかつ極めて礼儀正しい性格だということが示される。現代に慣れるためのメモ帳も観客の笑いを誘うと同時に、彼の几帳面さを強調している。さらにここで挨拶を交わす男が、物語後半で活躍するための面通し、という無駄のなさ。ついでに言うと、迎えに来たブラックウィドウの「スミソニアンに化石を運ぶ任務よ」というセリフは後のシーンに引っ掛けたジョーク、と10分ほどの間に情報と主要キャラの性格が詰め込まれている。


正直、これまで知らない監督だったんだけど、これだけでも上手さはよくわかる。また、キャラクターがいなければ成り立たないアメコミ映画ではあるんだけど、主人公以外が全て敵、というスパイアクション、ポリティカルスリラーとしても骨格がしっかりしているから面白い。


キャップは、他のアベンジャーズと違って、普通の武器でも、撃たれたり刺されたりすると死んじゃうんだよね。だからこそ、シリーズ転換点として今作に必要な謀略スパイものに、見事にマッチする。


アクションシーンもダラダラ長くなく、見せ方を変えてくれているので飽きることはない。
破壊不能な盾だからこそ、それを様々に使ったアクションが展開。アイデアの練度を上げるっていうのはこういうこと。


個人的には、フューリーvs.暗殺部隊のガン&カーアクションがお気に入り。
ただの威張ってるアイパッチじゃなく、本当に修羅場をいくつもくぐり抜けてきたことがよくわかる。
凄いボンドカーみたいのに乗ってるんだけど、離陸機能ってなに? 飛ぶの? 跳ぶの?
このボンドカーのAIがジャービスっぽい。他にもエレベーターやUSBメモリー(?)などあちこちに人工知能が使われていて、これがウルトロンにつながるのかしら? と妄想したり。


アクション面では新キャラのファルコンを外せない。
アメコミ映画で、飛ぶのに特化したヒーローは珍しいんじゃないかなぁ。他のヒーローが魔法じみた力なのに対して、彼はメカの翼で、これが身震いするほどにカッコイイ!
演じるのは、冷静なエリート黒人枠のアンソニー・マッキー


また、過去作でもおまけという印象が拭えなかったブラックウィドウが、キャップの相棒として大活躍。
任務中に彼と交わす、からかいやりとりが楽しく、それによって『アベンジャーズ』以降、二人は何度も組み、友情があることが表されている。
特に、彼女の「訊かなくてもわかるけど、あんた、童貞でしょ?」(脳内補正済み)という質問に対して、キャップの「ははは、あ、当たり前ないじゃないか」、という意地悪さがたまらないw
モリーがなくなった! というシーンで鏡に映る、風船ガムをふくらませる彼女も、これまた意地悪そうでいい。
基本脳筋で、真っ直ぐなキャップだけでは謀略戦を乗りきれず、それをブラックウィドウが見事に補っている。
ちなみの、矢じり型のネックレスをしてたから、ホークアイとはラブラブなのかしら?


物語は、アメリカ的小さな正義vs.キャップの理念とする大きな正義。
前作では、善悪の区別がはっきりしていたキャップだけど、今回はそれがグレーな世界。ヴィランは、裏のキャプテン・アメリカとも言えるようなウィンター・ソルジャー。しかも、その正体は死んだと思っていた親友。
ヘリキャリアによって世界を監視し、未然に敵を殲滅する、というS.H.I.E.L.D.の計画は、結論的には敵の陰謀に踊らされてることが明らかになるんだけど、この監視システム自体はフューリーも理事会も反対してないんだよね。
フューリーの「NY以降」とはもちろん『アベンジャーズ』の異星人侵略を指しているんだけど、911以降を連想するのは容易だし、全世界監視システムはエシュロンや先の盗聴問題を表しているのは明らか。スタークタワーもモロに監視対象。
アメリカ的正義は、結局、欧米が忌避するナチスドイツ的世界政策と何ら変わるところがない、とキャプテン・アメリカが批判するという、アメコミ映画としても面白いけど、込められたメッセージも非常に強力。


あと、「スタン・リーを探せ」は難易度2くらいかな。


2D、IMAX3Dと続けて観たけど、全然飽きませんでしたわ。オススメ。
ちなみに3Dで見る必要性は低い。エンドクレジットのアニメくらいかな。


唯一の難点は、ナースナース言うのに、エージェント13がエロい看護服で出てこなかったことかなw


以下、ネタバレ雑文。


ヒドラが世界を支配し、S.H.I.E.L.D.の中にも党員が多数入り込んでいることが明らかにされるけど、あの面白いハゲのシットウェルもそうなら、コールソンはどうなの!?
また、『アイアンマン』に出てきた議員も党員ということは、『インクレディブル・ハルク』の将軍や、シリーズ中、スーパーヴィランではないけど、主人公の対抗勢力にいた人間は、みんなヒドラなのでは? とシリーズをさらに有機的に結びつけることに成功している。


ファルコンさんもアガったんだけど、個人的には、無数のリール式コンピュータのモニターに人影が映った時が、一番盛り上がる。
前作のとき、続編に出てほしいなぁ、と思ったにも関わらず、『アベンジャーズ』をはさんですっかり忘れていたゾラ博士が登場!
ぶっちゃけ、コミック版の姿はかなり面白(好きだけど)で、あのまま実写化したらフィクションラインがずれそうだけど、ゾラ博士としてのアイコンとモニターに映る顔というレトロフューチャー感を残しつつ、戦後からずっとアメリカの政治に深く食い込んでいたことを表す、あのアレンジは見事。漫画の実写化におけるコンバート作業としてはお手本だと思う。
テープが何万平方メートルあろうと、人工知能はできないよ! という意見はスルーでw


バッキーとヒドラを追っていくのが、今後のキャプテン・アメリカの横軸で、クロスオーバーとして〈アベンジャーズ〉が貫く形になっていくんだろうね。


で、『アベンジャーズ』以降のお約束になった本編終了後のおまけ二段構え(『アイアンマン3』は一つだけだったけど)は、これが、もう前に乗り出すレベル。
エンドクレジット後がシーズン最終話である『アベンジャーズ』につながるおまけで、エンドロール後がその作品の次回作につながるおまけ、という形。
バロン・ストラッカーは別に「ふーん」だったんだけど、双子登場ですよ!
これによって、無邪気に『アベンジャーズ2』の新キャラと喜んでいられなくなり、アベンジャーズにもヒドラが食い込んでいくのか? となり、内外に敵を孕むことになる。
この世界には(たぶん)マグニートーがいないから、彼らはヒドラによる改造人間、という扱いなのかな。
ただ『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』*4マグニートー少年がナチスに捕まるシーンがあるから、しれっとそことつなげちゃったりしてw


ところで、あのインフィニティ・ジェム的なものがはまった剣はなに?


今後も楽しみ。