WHERE THER FIRE IS NOT QUENCHED and Other Uncanny Stories

胸の火は消えず (創元推理文庫)

胸の火は消えず (創元推理文庫)

死してなお朽ちることなき情欲の炎,永遠に繰り返される罪――孤独な女性が堕ちた愛の地獄を描く「胸の火は消えず」。地方史編纂の仕事で陰鬱な窪地の家に下宿した男が少女の幽霊に遭遇する「仲介者」。他者を癒す不思議な力をもつ女性を襲う恐怖と霊的闘いを描いて圧倒的な「水晶の瑕」他,全11篇。女性の深層心理や性の問題に取り組み,そこから生じる仮借なき恐怖を精妙な筆致で綴った異色怪談から,死後の世界や心優しき幽霊の登場する軽妙な作品まで,再評価著しいメイ・シンクレアの怪奇小説を集大成。


・「胸の火は消えず」
・「形見の品」
・「水晶の瑕」
・「証拠の性質」
・「死者が知っていたら」
・「被害者」
・「絶対者の発見」
・「マハトマの物語」
・「ジョーンズのカルマ」
・「仲介者」
・「希望荘」

100年前の作品なので表現は押して図るべし……なんだけど、ひどく生々しい。


解説にもあるように、男性キャラクターはあまり印象がないんだけど、女性は生きてても死んでても、その情念がドロドロしている。燃え盛る強さで、ジトっと染み付く。
「形見の品」のただ座って、夫を見ているだけの幽霊も怖いし、「水晶の瑕」の主人公を逆恨みする女(生者)も怖い。「死者が知っていたら」の死ぬことによって息子を我が物に呪縛してしまう母の霊も恐ろしい。
出てくるのは、悪意からではなく、強すぎる想いが、結果的に不幸を引き寄せてしまうものが多い。
ハッピーエンドではある「被害者」も、主人公は一生束縛されたようにしか見えないよなぁ。


面白かったのは「証拠の性質」。
幽霊とセックスする話は多いけど、結末が悲劇になるものも多い。
しかし、この作品ではそっちの方がいい、というオチ。でも、これもまた、亡き妻に縛られる物語といえる。


アンソロジーでちょろちょろとしか読めなかった作家が、こうしてまとめてくれるのはありがたい。