STARSHIP & HAIKU

スターシップと俳句 (ハヤカワ文庫 SF (580))

スターシップと俳句 (ハヤカワ文庫 SF (580))

人類がクジラとのファースト・コンタクトに成功したのは、2022年3月3日、全世界に壊滅的な破壊をもたらした〈千年期大戦〉の勃発から、21年後のことであった。この巨大な異種族は、暗号言語学者にでも動物学者にでもなく、ひとりのうら若い少女、大臣である父の命を受け日本からハワイへと向かっていたイシダ・リョーコに語りかけてきたのだった。「いまやすべてのもののサバイバルが問題になった」そう語るクジラが人類に与えた驚くべきメッセージは……!? ジョン・W・キャンベル新人賞に輝く、米SF界期待の新鋭が放つ異色近未来SF!

赤トンボ 羽をとったら! ……トウガラシ


題名といい、作者名といい、あまりにキャッチーで、思わず手に取らずに入られない一冊。
まぁ、今まで読んでこなかったんだけどw 


ジャパンのチャイルドとしては「俳句」にどうしたって反応しちゃうよね。それに「スターシップ」がついてるんだから、ますます、どんなSFなのか予想もつかない。でも、原題もそうなんだからしょうがないじゃない。


文明崩壊&ファーストコンタクトもの、とSFのサブジャンルとしては真っ当なものなんだけど、初めて読んだSFがこれだったら、人生変わってたかもw


作中のほとんどがジャパンを舞台にしているというのも珍しいんだけど、そこに出てくるSF的ロジックも、ガジェットも、確信犯なのか、勘違いなのか、変に詳しい割にはやたらと変。
金閣寺、シュト高速、雅楽、墨絵、と単語自体はおかしくないんだけど、作者の目に映っているそれと、我々が見ているものは明らかに違う。わざわざ、自殺テーマパークと化した富士急ハイランドなんて出さんでしょ。あと、テンプラ・ソバはあまり簡素な食事ではないと思うけど、天カスのイメージかしら?
まさに、絶妙に微妙なむーどのディストピアが繰り広げられ、変なところを上げていったらキリがない。


クジラ、ハラキリ(自決)、と極めて戯画化されたジャパン像がこれでもかと展開されるんだけど、その本質は生命賛歌。


死に覆われた世界で、主人公たちが目指すスターシップはそれとは逆ベクトルに向かうもの。
また、この作品における俳句は、生命や静かさを表すもの。だから、終盤で出てくる「赤トンボ〜」の俳句(?)は芭蕉先生にこっぴどく批判される。


傑作とは言わないけど、このへんてこな世界は嫌いになれない。