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逃亡派 (EXLIBRIS)

逃亡派 (EXLIBRIS)

わたし/人体/世界へ向かって──116の〈旅〉のエピソードが編み上がる、探求と発見のめくるめく物語。『昼の家、夜の家』の作家が到達した斬新な「紀行文学」。ポーランドで最も権威ある文学賞《ニケ賞》受賞作。

『昼の家、夜の家』*1が土地に根付いた物語、土の匂いがするのならば、こちらは旅で、海や空気の匂いがする。


旅と言っても、普通の旅の紀行ではなく、「今、ここではない」場所へ移動することを旅と定義し、そこから派生していく数多くのエピソードから物語が出来上がっている。
極論すれば、家から一歩も出なくとも、今日と明日で地球が占めている空間座標は別なのだし、人体の細胞だって入れ替わっていく。人の心だって、当然変わる。


いくつかの物語がパラレルに進む構成。
作者と思しき旅が人生の女性の紀行、旅行先のクロアチアで妻子が行方不明になる男性、隣国に攻め込まれるハーレムの王、先人の研究を訪ねる解剖学の天才、ロシアに輸送される標本コレクション*2、重病の元恋人を故郷に見舞う女性研究者、皇帝に父の剥製の埋葬を請願する手紙……
様々な国や時代の情景が描かれ、未知を発見するエピソードが積み重なっていくが、それによって、逆説的に故郷(ポーランド)を強く意識させられる。


ブンダーカマーの言及も多く、その向きにもオススメ。