2014年5月号

今月の特集は、英語圏SF特集


翻訳は3本。
「パッチワーク」 ……ロラン・ジュヌフォール
フランス作家。
巨大な惑星オマルのホドキン族の検死医シズニーは、運ばれてきた遺体に奇妙なものを見つける。
同じような死体を何度か目撃し、ヒト族の友人で、刑事のムスラーフにそれを話すが……
4月に出る『オマル―導きの惑星―』のスピンオフ。
この短篇が、本編に対してどういうタイミングで書かれたのかはわからないけど、お試し版としてはかなりいい塩梅。
短い中に、この世界の様子がわかるし、三つの種族の違いも自然と飲み込める。
本編の予習にオススメ。


「鼠年」 ……スタンリー・チェン(チェン・チュウファン)
中国作家。
逃げ出した、遺伝子操作され、巨大化したネズミを駆除する青年たち。
残酷さに、彼らは徐々に精神を病んでいく。
一方、ネズミたちは設計とは違う変化を見せており……
今まで、何度か中国SFは訳されたけど、あんまり面白いと思ったことないんだよね。
でも、これはなかなかゾワゾワする感じが気色悪いw
中国SFなのに、中国が覇者になってるわけでなく、現状とあまり変わってないのが、ディストピア的かも。
未だ世界の工場で、大学卒業しても職はなく、巨大ネズミはPM2.5を思い起こさせる。


「異星の言葉による省察」 ……ヴァンダナ・シン
インド作家。
異星に入植した人類。
そこに残された遺跡に、パイロットが飲み込まれたため、救出に向かった研究者。
彼女は、そこで世界と人生を一変するものに出会う。
いまいち、ピンとこなかったんだけど、輪廻っぽいイメージや音楽が聞こえてくる印象は、なんとなくインドっぽいw


「廃り」 ……小田雅久仁
基本、翻訳しか食指が伸びないけど、小田雅久仁は読みますよ〜。
すべて灰色の、廃り、と呼ばれる存在がいる世界。
彼らはなぜいるのか不明で、人々は彼らがいないかのように振舞っていた。
主人公は母が遺した私小説を読み、家族が話したがらない叔父の人生を通して、廃りの真実を目にしていく……
廃りを完全に無視して生活する人々の雰囲気が、なんとも言えず皮膚を粟立たせる。
非人間的な、とここから言うのは簡単だけど、我々も同じことをやっちゃうよね。まさに作中に出てくる、ぞわぞわする感じ。
直視したくない現実世界から、するりと幻想にシフトするのは「11階」*1を思い起こさせる。
また、深夜に行われるお祭のような気配も同様。



「SF COMIC SHORT-SHORT」第5回
小原慎司
このスチームパンクは好きだなぁ。


「タイム・スリップSFM」第25回
1967年5月号。


大森望の新SF観光局」お休み


堺三保アメリカン・ゴシップ」第55回
アメリカのテレビドラマはリバイバルブーム?
HEROES』またやるのね。


「サイバーカルチャートレンド」第52回
電気製品のスマート化


「精神の中の物語」第5回
STAP細胞騒動


「サはサイエンスのサ」第227回
ビットコインの革新性
ビットコインのテクノロジー自体は思ったこともなかったなぁ。


「乱視読者の小説千一夜」第37回
禁煙になる前の飛行機は乗ったことないんだよねぇ。
タバコ嫌いとしてはありがたいw


「SFのある文学誌」第29回
内地雑居をめぐる未来小説たち


「近代日本奇想小説史[大正・昭和篇]」第10回
全盛期奇想小説の原型となった超小型本


「MAGAZINE REVIEW」は〈アシモフ〉誌
"The Time Travel Club"チャーリー・ジェーン・アンダース
"Waiting For Medusa"ジャック・ダン
"Pearl Rehabilitative Colony For Ungrateful Daugheters"ヘンリーチャン
が面白そう。


「エンタメSF・ファンタジイの構造」第2回
有川浩図書館戦争
こう分解されると、ますます読む気はなくなるなぁ。
面白いんだろうけどね。


現代日本演劇のSF的諸相」第2回
Q――コラージュの悲劇


来月の特集は、「ジュヴナイルSF」