BONDS OF JUSTICE

裁きの剣と氷獄の乙女 (扶桑社ロマンス)

裁きの剣と氷獄の乙女 (扶桑社ロマンス)

パラノーマル・ロマンス〈サイ=チェンジリング〉シリーズ第8弾! ヒューマンの刑事マックスは、司法サイのソフィアとともに、サイ評議員ニキータの周辺で起きた連続変死事件を調査することに。ふたりは急速に惹かれあってゆくが、ソフィアは大きな問題を抱えていた。長く犯罪者の記憶をスキャンしてきた彼女の精神はもはやぼろぼろで、他人にじかに肌に触れられただけでも壊れてしまいかねない状態だったのだ。困難な状況下で育まれる愛のゆくえとは? 巻末には特別短篇!

シリーズ第8弾。
ロマンスものはシリーズがちゃんと訳され続けることが多いんで、読者としてはありがたいね。


とはいえ、さすがにちょっとマンネリかなぁ、という近作の中では一番面白いんじゃないかなぁ。
シリーズ中ではターニングポイントになる作品で、第一作『黒き狩人と夜空の瞳』*1を彷彿とさせる。
つまり、感情がなく、触れられるだけで壊れてしまうような神話的処女性を保ったクールビューティーとワイルドなヒーローというベタベタなロマンスを、かなりしっかりとした異世界設定で支える、というなかなかバランスの難しいパラノーマル・ロマンスということを。
ダレやすいシリーズ中盤で、これを思い出させる作品を投入するというのは、シリーズ構成は全て出来ている、と語る作者の手腕だよなぁ。


物語は今までと同じようにグランドホテル形式で進む。
まず、主人公ペアのロマンス。今回のヒロインは、凶悪犯の精神を読みすぎて、素肌で人に触れることができない司法サイのソフィア。常に手袋をしているという時点でエロいよねw
この二人が担当するシリアルキラーの事件と、ニキータ評議員暗殺未遂事件。
そして、サイ上層部の陰謀劇。
特にサイ周りの動きは、今後の展開に波乱を巻き起こすはず。これまで、いまいち見分けがついてなかったサイ評議員たちのカラーが大きく変わり、クライチェックは面白いことになってきたなぁ。


また、上記したように『黒き狩人と夜空の瞳』を彷彿させるのは、ヒロインのクールビューティーだけではない。
最近ではすっかりご意見番のような扱いだったサッシャが、その能力の真の可能性を見せるのも、シリーズの主人公を再確認させてくれる。
彼女の能力も、サイの派閥争いと合わせて世界の変革につながっていきそう。


今後も楽しみなシリーズ。
ロマンスはお約束どおり。