BLINDSIGHT

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫)

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫)

ブラインドサイト〈下〉 (創元SF文庫)

ブラインドサイト〈下〉 (創元SF文庫)

突如、地球を包囲した65536個の流星。その正体は異星からの探査機だった――。21世紀後半、偽りの理想郷でまどろむ人類に襲いかかった未曾有の危機。やがて太陽系外縁に現われた謎の信号源に向け、一隻の宇宙船が旅立つ。クルーは吸血鬼、四重人格言語学者、感覚器官の大半を機械化した生物学者、平和主義者の軍人、そして脳の半分を失った代わりに特殊な観察力を得た男と、いずれも特異な能力を持つ者たちだった……。ヒューゴー賞・キャンベル記念賞・ローカス賞など5賞の候補となり、テッド・チャンが瞠目した、現代ハードSF界随一の鬼才が放つ「意識」の価値を問う傑作!
太陽系外縁で巨大人工構造物ロールシャッハと遭遇した宇宙船テーセウス。猛烈な放射線が渦巻く中、クルーたちは正体も意図も不明なエイリアンとのファースト・コンタクトを試みる。しかしやがて、相手が人類とはまったく異なる進化を遂げた存在であると判明。手詰まりを打破すべくロールシャッハ内部に侵入したクルーたちを襲う、常識をことごとく覆す奇現象の数々。そして彼らは、人類の最終局面に立ち合うこととなる……。人類の「意識」はなぜ生まれたのか? 進化の次のステージとは? 黙示録的なヴィジョンを見せる、現代ハードSFの最高到達点!

『BLINDSIGHT』と聞いて思い出すのは、何と言っても、横浜で開催された2007年度ワールドコン
あらすじ読んで、訳してほしいなぁ、とヒューゴー賞に不順な動機で投票したのが懐かしい。ちなみに、この時の受賞作(ノベル部門)は『レインボーズ・エンド』*1。もう6年前か〜


という因縁(?)ある作品が、ようやく翻訳!
かなり楽しみにしてたんだけど、結構「?」な感触を得た人はいるんじゃないかなぁ……


昔どこかで見た「宇宙人とファーストコンタクトを遂げられるのは統合失調症患者かもしれない」というネタをそのまま推し進めたSF。
ろくな説明もなく、未来世界のガジェットがどんどん投入されるさまは往年の『ニューロマンサー*2に近いかも。そして、物語自体は、全く異質の宇宙人とのコンタクトで、『ソラリス*3を想起する読者もいるかと。


個人的には、ファーストコンタクトSFではなく、意識、コミュニケーションのあり方を描いた小説という印象。
登場人物全員の特殊能力が、現在(2010年代)では精神病、脳疾患として扱われているものばかりで、21世紀後半ではそれらが障害ではなく、ある種の超能力として認識されている、というのは以前から妄想していることと被って、好感度アップw


彼らが異星人とのコミュニケーションに四苦八苦すると同時に、クルー同士も互いは理解できず、さらに、この小説自体が作品と読者のディスコミュニケーション装置になっている気がする。
文章は平易で読み進めやすいにも関わらず、内容が非常に入ってきにくい。
これは、主人公で語り手のシリの「翻訳能力」、「中国語の部屋」をシミュレートしているような。


だから面白かったかと問われれば、よくわからなかったんだけど、非常にSFらしい「小説」ではあると思う。