Fenetres sur rue



先日のトークショー*1で紹介されていて、気になったパスカル・ラバテ(『イビクス』*2)の新作『Fenetres sur rue』を購入。
日本語に訳すと『街角の窓』『窓のある通り』とかそんな感じ?


ちょっと変わった製本で、蛇腹になっている。


ヨーロッパの特に珍しくもない、とある街の一角。その窓から覗く人間模様。
表は午前の十日間。裏面は同じく午後の十日間。
セリフはなく、住人たちの様子を十日間定点カメラで観察し続ける。『人生使用法』*3にちょっと近いかな。違う?


午前(午後)だけ、漫然と見ていても、それなりに動きがあって楽しめるんだけど、それでは住人たちの生活や人間関係を完全には理解できず、昼→夜→昼……の順番に見ていきかなければならない。
 


 



さらに、十部屋それぞれを注視して追っていくことによって、小さな街の一角の十日間に過ぎないのに様々な人間関係と人生が見えてくる。


例えば、左上の部屋の住人は、朝からけだるく、しかし夜は生き生きとしていて、翌日は昼近くの起床、と夜型と推測される。この男が、のちのちクソ野郎ということがわかるんだけどw
  


次に、一番右下に目を移すと、カップルが見える。しかし、一日目の夜には喧嘩をしているようで、翌日も仲直りはしていない様子。彼らはその後……
ちなみに一日目の朝にいるヒッチコック風の人物は、どうやら住人たちには見えていないナレーターのような存在らしく、彼がいる場所では後に事件が起きる。こういう人物は三人いて、読み解きのヒントになっているんだけど、何を表してるのかわからない時もあるんだよなぁ。
  


また、コインランドリーの前にいる二匹の犬の日々の様子や、真ん中の建物に幸せそうな三人家族の秘密、右上の裸婦像完成するのか、など、幾つものドラマが展開され、セリフがないので想像力と多少の推理が必要だけど、それだけに上質な絵解きミステリーとして何度見ても発見と喜びがある。
風景も一辺倒ではなく、濃霧の日もあれば強風の日もあり、真っ暗でほとんど明かりのない夜と様々。
ちなみに、たいてい、どこかでエロい事態が起きているのも特徴w


オススメ。