The Sharing Knife : Horizon

地の民を治療する医術の匠を目指すことにしたものの,ダグは基礎に及ぼす自分の能力を把握しかねていた。《新月湖》駐留地に基礎継ぎの匠がいるとの噂を聞いたフォーンに勧められ,ダグは教えを乞おうと決意する。川の民の女性と結婚したフォーンの兄と別れて《新月湖》へ向かう一行。果たして湖の民と地の民の夫婦は,駐留地で歓迎してもらえるのか? 弟子入りを志願してきたダグに,基礎継ぎの匠アルカディは戸惑いを隠せない。ふたつの民族の融和に奔走するダグとフォーンの奮闘を描く,名手ビジョルドの傑作ファンタジー四部作完結。
基礎継ぎの匠アルカディへの弟子入りを許されたダグ。地の民である妻のフォーンも,《真珠の早瀬》からついてきた元警邏員の若者バーとレモも,《新月湖》駐留地に安住の地を見いだしたかにみえた。しかし,偶然知り合った地の民の甥を,捉を破ってダグが治療したことから,再び一行は駐留地を出ていく羽目になる。驚いたことに,今度はダグの師となったアルカディも一緒に来てしまうのだ。平和な旅も束の間,ダグたちの前に再び悪鬼の影が……。戦い慣れた警邏員はわずかしかいない。ダグとフォーンは,どうやって悪鬼に立ち向かうのか。

ビジョルド訳すなら、マイルズにしてよ〜、してよ〜(エコー)と思いつつ読んでいた、死者の短剣シリーズもこれにて最終巻。


徐々に(と言っても全4巻だけど)面白くなってきたシリーズだけど、この最終巻が一番面白かった。


前半は、医術の匠を目指すことにしたダグの修行の様子。
治療の様子を理詰め(この世界における)で、魔法的アプローチでの描写というのはあまり見たことないなぁ。これもSF作家としての面が出ているのかな?


後半は、混成部隊での旅。この主人公たち以外の面々をもっと読みたいと思わせるのがビジョルドは上手い。
他の作品でも同様なんだけど、主人公たちの活躍の裏で、美味しい展開を見せているんだろうなぁ、と想像させるのが巧みなんだけど、それを描かずにスマートに展開させてしまうという欲求不満w キャラクターがそれぞれフォローされてるのって、マイルズ・シリーズくらいじゃないかなぁ。


社会構造を変えていきたいという二人の願いが徐々に周囲に染みていく様子が丹念に描かれていて説得力がある。
また、それを変革する可能性があるアイテムがダグの才能とフォーンのへの愛であり、またラストのクライマックスもそこに直結しているため、医術や旅、強大な悪鬼との戦い、と色々なエピソードがありながら、最後は二人にクローズアップして終わる印象を強くしている。拡散と収縮が同時に行われているよう。