I BIPLANI DE D'ANNUNZIO

時鐘の翼

時鐘の翼

夜のアドリア海上空を、爆撃機〈シュターケン〉の部隊かパドヴァヘ向かって飛んでいく。そのうちの一機、オーストリアハンガリーの軍人でトリエステ人でもあるマッテオ・カンピーニ大尉の乗る機体は、トラブルのあげく敵に撃墜されてしまう。何者かが第一次世界大戦の運命を変えようと、100年先の未来から介入していた……

カプローニって聞き覚えあるなぁ……と思ったら『風立ちぬ』か。
戦闘機おやじの心を鷲掴みにするものがあるのかしら?


そんなわけで、タイムトラベルものなんだけど、作者の飛行機大好き描写の押しが強い強いw
現代のアクロバット専用機をWWI期のエースパイロットに操縦させたかったんだろうなぁ。
感触的にはロマン・ユゴー*1のコミックに非常に近い。
空戦や物語に関わってくるならまだしも、単なる整備シーンでも、戦闘機好きでないと退屈してしまいそうなディティールにえらく紙幅を割いており、それが実際物語を圧迫していて、後半は良く言って急展開。
ロシアの衛星とか、あまりにも唐突でとってつけたよう。


ただ、日本人としては意味が掴みかねるヨーロッパ情勢に大変興味が引かれた。
ナチスの蛮行を起こさずに、ドイツ帝国を完成させるために、第一次世界大戦の結末を書き換えるという陰謀は、日本人でも容易に予想がつくんだけど、当時のイタリアの地勢的位置は知らなかったし、ドイツを勝たせることが、クロアチアボスニア・ヘルツェゴビナ、ひいてはロシアまでつながっていくという皮膚感覚はヨーロッパ人でないとわからないものだろうね。
タイムトラベルよりも、そのへんが面白かった。
また、時間軸を元に戻した所で、ホロコーストが待っているという、なんとも言えない後味。