The Girl Who Circumnavigated Fairyland in a Ship of Her Own Making

宝石の筏で妖精国を旅した少女 (ハヤカワ文庫 FT ウ 6-1)

宝石の筏で妖精国を旅した少女 (ハヤカワ文庫 FT ウ 6-1)

ある日、12歳の少女セプテンバーの前に、空飛ぶヒョウにのったおじさんが現われました。「わしは〈緑の風〉という風の精じゃ。妖精国に行ってみたいとは思わんかね」退屈な毎日にうんざりしていたセプテンバーは、迷わず誘いに飛びつきます。不思議な門をくぐり抜け、妖精国へと入った少女は、魔女の姉妹や人間狼、智竜や付喪神と出会って、思いもかけぬ冒険を!? ローカス賞に輝く21世紀版『不思議の国のアリス』登場

解説にある作者の言葉が感想を代弁している。
ドロシーやアリスは家に帰っちゃうんだよね。読者としては、もっと彼女たちのワンダーランドを見ていたいのに!
そんなわけで、主人公のセプテンバーの行動原理は、帰還にベクトルが向いていない(最終的にはそちらに向くけど、それも母親が心配しているかも、という理由)。


彼女が冒険する世界の住人は『孤児の物語』*1同様、世界の神話・伝説で見たことあるような、しかし、彼女独特のオリジナリティが加えられた存在ばかり。
特に、セプテンバーの相棒となる、図書館とワイバーンのハーフである智竜のエーエルはかわいらしい。また、石鹸ゴーレムや森の奥に住む死も印象的。


悪役たる侯爵の行動原理と正体もよく出来ていて、悪のセプテンバーという感じでもあり、過去の同様の作品のヒロインたちの影のようでもある。
ラストも、異世界を愛する者にとっては、かなり理想的かなぁ。


ところで、付喪神の朧の「ごめんさない」って誤字なのか、そういう喋りなのか、いまだに判断がつかない……