I Remember Pallahaxi

パラークシの記憶 (河出文庫)

パラークシの記憶 (河出文庫)

冬の再訪も近い不穏な時代、村長の甥ハーディは、伝説の女性ブラウンアイズと同じ瞳の色の少女チャームと出金う。記憶遺伝子を持つこの里の人間は、罪の記憶が遺伝することを恐れ、犯罪はまず起きない。だが少年と少女は、背中を刺された男の死体を発見する……名作『ハローサマー、グッドバイ』の待望の続編。真相が今語られる。

長らく待っていました! 『ハローサマー、グッドバイ』*1の続編。


『ハロサマ』の記憶がおぼろげなまま読み始めたんだけど、「こんなに原始時代っぽかったけ?」「あれ?」「伝説のブラウンアイズ?」「あれ?」と舞台設定は大幅に前作から変えられている。
しかし、物語自体は明らかに『ハロサマ』ありきなので、前作未読で着手することはオススメできない。


前作以上に
ラブ成分が強く、1ページ目でフラグが立って、10ページまでにはフラグは不必要になる展開の速さw
先祖より受け継ぐ完全記憶を持っている時点で、ハーディとチャームが誰の生まれ変わり(というわけではないんだけど)なのかは、ネタバレ注意と描く必要もないほど明らか。
ならば、二人が惹かれ合っていく過程に紙幅を取る必要はない。
しかも、前作よりもだいぶ長いのに、何が物語の推進力になっているかというと、殺人と陰謀というミステリと、前作にはなかった直球なSF感、そして長い冬の到来。


殺人が(ほぼ)起こらない世界で、誰が、何の目的で事件を起こしたのか? この世界設定にしっかり立脚した殺人で、異世界ミステリとしてよく出来ていると思う。この犯人だからこそ巻き起こせる終盤の騒動も含めて。また、殺人の証拠の見つかり方もこの惑星ならでは。


『ハロサマ』は地球人の話だっけ? というくらい、エイリアン感が弱かったけど、今回は地球人がいるので、彼らが異星人であることを強く意識させられる。前作ではエイリアン感の弱さがラストの衝撃につながっていたんだけど、今回はその印象の強さが同じくラストへとベクトルが向かっている。
中盤でいきなり明かされるドSF設定! 「うそーん」と声が出るレベルw
しかし、そこが第二のスタート点となって、完全なる異世界の物語であると認識が塗リ替えられてく。
40年の寒期をどうやって乗り越えるかは全読者が知っていることだけど、キャラクターがそこにどうやって辿り着くのかが終盤の見どころ。
冬眠やロリンさえも、ここで明らかにされたSF設定に組み込まれていくさまは、SF者としてはある種快感w 


完全記憶を持ったハーディの一人称なので、チャームとのことが中心になるのはしょうがないけど、カフとシリー・メイを加えて、ジュヴナイル的な4人の冒険を見たかったなぁ。ファウンも入れて三角関係でも可w特に、シリー・メイはもったいないと思うんだけど。


あと、ドローヴはリボンの記憶は残さなかったのね……