THE KOLCHAK PAPERS

事件記者コルチャック (ハヤカワ文庫NV)

事件記者コルチャック (ハヤカワ文庫NV)

わたしの名はカール・コルチャック。新聞社に勤める事件記者だ。ボスのビンセントとやりあいながら、カメラとテープレコーダーを武器に、今日も事件の渦に飛び込んでゆく……1970年代に熱狂的な人気を得ながら、わずか1シーズン放送されただけで終了し、しかし現在に至るまで多くのコンテンツに影響を与えてきたカルトTVシリーズ。その幻といわれた原作小説を発掘!闇の世界に跋扈する連続殺人鬼を追う2話を収録!

同名ドラマ*1の原作小説。


こんな世界の外縁部をうろついてるんで、名前だけは知識として知ってる作品は無数にある。
特に映像作品の場合、怪獣百科ばかり眺めていた幼年期を過ごしていたため、ヴィジュアルだけは知ってるものが多い。『アウターリミッツ』のザンティ星人とか。
で、コルチャックはどうかというと、オカルト探偵的な?という漠然としたイメージ以外、全く知らないんだよね。解説で語られてる"つかみ"はおろか、画面の感じもわからない("つかみ"といえば、『Aチーム』もオリジナルだと、OPは音楽しかなくてショックを受けた覚えが……)。


そんなわけで、全然知らないドラマの、それも大昔の作品のノベライズ(?)かぁ……という先入観があったんだけど、いやいや普通に面白いですよ。
ドラマを知らない人は、題名でミステリかなんかだと思ってるかもしれないけど、何かと問われればホラーになるかな。
上記したように、全然知らないんで、連続ドラマの一話にしては変だなぁ、と思ったら、このエピソードが好評で連続ドラマ化されたのね。


紹介に必ず題名が挙げられる『X-ファイル』と確かに似ていて、主人公のコルチャック自身は普通の人間なんで、オカルト退治はできず、あくまでその正体と事件の真相を追う、という体裁。
彼の全行動原理は特ダネを上げることで、みなぎる情熱と負けん気と皮肉をエネルギーにして、人智を超えた闇を突き進んでいく。
タフなブンヤというイメージは、他作品で見られるようなキャラクター像と同様なんだけど、彼の場合は、真実そのものが荒唐無稽なのでボツにされ、まさにXファイル行き。
また、記者能力外のプライベートの彼が、けっこうダメ人間というのが愛らしい(笑)


しかし、彼の最強の敵は妖怪ではなく街の権力者、というのが、この作品のユニークな点であり、苦々しい部分でもある。
特に第一話「ラスヴェガスの吸血鬼」のエピローグは恐ろしく、ラスヴェガス上層部はあそこまでできちゃうの?
小説としては、コルチャックの取材をもとに、作者のジェフ・ライスが小説化しているという体なんだけど、もしかしたら描かれていることは真実で、だからこそ、ライスの人生が順風満帆でないのかも、と思ってしまったり(笑)


第ニ話の「シアトルの絞殺魔」は、正直、第一話の二番煎じっぽく感じてしまうんだけど、シアトルの地下街が非常に魅力ある舞台として登場する。謎の絞殺魔のアジトとしても、なかなか似合っている。マリナーズは興味ないんだけど、シアトル・アンダーグラウンド・ツアーは行ってみたいんだよなぁ。


解説にある、本編以上に複雑怪奇な、映像化に際する権利問題も面白い。
それにしても、マシスン、ええ人や……