GOODBYE FOR NOW

さよならのアルゴリズム

さよならのアルゴリズム

サム・エリング、32歳、コンピューターオタク、独身。彼は愛する女性(ひと)の笑顔のために、あるプログラムを生み出した。それは、故人のパソコンに残っているメールやチャットの履歴を使い、まるで生きているかのように、その人物と言葉を交わすことができるというものだった。純粋な想いから生まれたそのプログラム〈リポーズ〉は、進化をし続け、やがて永遠の喪失と悲劇に奇跡を呼び起こすことに――

アフター0*1の「恋愛回線」みたいな話。


ネタ的にはSFっぽいんだけど、別に人工知能に進化しちゃったり、社会を変革してく、なんてことは起こらない。途中、宗教者やマスコミが押しかけるシークエンスがあって、期待したんだけど、そちらに話が向かうこともない。
むしろ、ある日突然振りかかる「死」に対する心構え、「死」の乗り越え方を、SF的ガジェットを使って語ることを目的としている。
また、〈リポーズ〉が主人公たちの想定とは違う使われ方をしてしまう顛末も、同じように「死」とは逆に「生」や「老い」にも目が向くように構成されている。


死を扱っているからこそ、それぞれのキャラクターがかなり魅力的に造形されていて、特に、主人公の恋人のメレディスと父親はいいキャラクターで、サムの想いを追体験できる。


初めのころから出てくるバグが、人生には余計なものなどない、というメッセージにも見える。