かつて描かれたことのない境地

かつて描かれたことのない境地: 傑作短篇集 (残雪コレクション)

かつて描かれたことのない境地: 傑作短篇集 (残雪コレクション)

現代中国のユニークな作家、残雪。その初期から近年までの作品を精選し、14編を収録した日本オリジナル短編集。特異で不思議なイメージに満ちた作品世界は読者を放さない。残雪ファン待望の書。

収録作品
・「瓦の継ぎ目の雨だれ」
・「奇妙な大脳損傷
・「水浮蓮」
・「かつて描かれたことのない境地」
・「不吉な呼び声」
・「絶えず修正される原則」
・「窒息」
・「そろばん」
・「生死の闘い」
・「ライオン」
・「大伯母」
・「綿あめ」
・「少年小正」
・「アメジストローズ」

予想はしてたんだけど、やはり『残雪研究』*1からの収録か〜。『残雪研究』を全号所持している人はわざわざ買う必要はありません。個人的には半分くらいしか持ってなかったんで、買って損はなかったんだけど。


残雪といえば、個人的には『黄泥街』*2の印象が、汚泥のように、いや、ストレートに肥溜めのように脳にこびりついている。以前出た短篇集『カッコウが鳴くあの一瞬』*3でも、グロテスクなまでのド田舎っぷりにかなりヘロヘロ。もやしっ子なんで、汚い描写は、残酷描写の比にならないくらいイヤ。


そんなわけで、残雪は読む前に深呼吸が必要なんですよ。


と思ったら、あれ、臭わない……
相変わらず、そこで生活している人々は垢抜けないんだけど、街はちゃんと掃除がされている(笑)


画像で表すとこんな感じ(笑)


以前読んだ作品は汚泥表現そのものがシュールな世界を形作っていた印象なんだけど、この本に収められてる作品は、シュールな部分だけを水上置換した感じ。
だから、よりシュール度は高まり、もやもやとした読書感。


正直、話はよくわからないんだけど、この正体不明の漠然としたイメージが臭気の代わりに脳に染みこんでくる。
漠然とした不安感は、咬み合わない話し相手、夜の暗がりの向こう、思い出せない故郷の記憶、自分の将来、様々に形を取る。
さらに漠然とこの短篇集を俯瞰すると、自分のルーツがよくわからない作品が多い気がする(無理矢理)。中国というと、長々とした家系図が出てきそうなイメージだけど、収録されているのがここ10年前後のものが多く、家族観も変わってきているのかな。


お気入りは、「奇妙な大脳損傷」「不吉な呼び声」「そろばん」「ライオン」「大伯母」あたりかな。


残雪コレクションとあるけど、続刊予定?