MOON OVER SOHO

顔のない魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

顔のない魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

歓楽街ソーホーで奇妙な事件が多発した。ジャズ・ミュージシャンが演奏直後、あるいは帰宅途中に相次いで突然死したのだ。その体から魔術の痕跡をかぎとったピーターは、ただちに捜査を開始する。死体はみな古いジャズの名曲《ボディ・アンド・ソウル》を奏でていたのだ! だがその直後、高級クラブの地下トイレで、魔術師とおぼしき男の惨殺死体が発見される。やがて事件の背後に、妖しい魅力をもつ女と黒魔術師の姿が!?

ロンドン警視庁特殊犯罪課第2巻。『女王陛下の魔術師』*1の続き。


オリジン及び複数の事件が同時進行したため、てんこ盛り感及びとっちらかった感が強かった前作に比べ、今作は、事件はジャズ・ヴァンパイアとワギナ・デンダタに絞られ、さらに両者の背後に黒幕が……という展開なのでまとまりがある。


刑事でもなく、魔術師でもなく、魔法刑事として活躍し始めるピーター。基本ボンクラなんで、事件に修行に雑用に恋愛と、大忙しなんだけど語り口はユーモラス。
師匠のナイティンゲールも堅苦しくなく、怪我してるのにこっそりビール飲みながらラグビー観戦、モリーの料理に飽きたときはピーターと内緒でパブに行っちゃったり、結構男の子。前作の大怪我で登場は少ないものの、ホグワーツ発言を嫌がったり、彼の背負うものが明らかにされたり、存在感は健在。
悲惨な重傷を負ったレスリーもバックアップとして登場。彼女に関しては次回が楽しみだなぁ。
また、事件がジャズ絡みなので、ピーターの父親も活躍。


悪しき黒魔術師の存在やナイティンゲールの若さの疑問、モリーの出自など、ユーモラスの中にシリアスな、それも魔法絡みの問題が提起されていく。
次作も期待させられる。