EL LUGAR SIN LIMITES

境界なき土地 (フィクションのエル・ドラード)

境界なき土地 (フィクションのエル・ドラード)

大農園主ドン・アレホに支配され、文明から取り残され消えゆく小村を舞台に、性的「異常者」たちの繰り広げる奇行を猟奇的に描き出す唯一無二の〈グロテスク・リアリズム〉。バルガス・ジョサに「最も完成度の高い作品」といわしめたチリの知られざる傑作。

ドノソ、と言えば『夜のみだらな鳥』*1で、ドノソ作品はそれしか読んでないんで、どうしてもあの延々と続くグロテスクな宴を期待しちゃう。


しかし、残念なことに、この作品はそれが比較してかなり薄い。
物量的にも中篇レベルで、もともとは『夜のみだらな鳥』に組み込まれる予定のエピソードをふくらませたものだとか。
まぁ、薄いといっても、他の作家だったら、十二分に狂気なんだけど(笑)


『夜のみだらな鳥』が屋敷に詰め込まれた異形たちなら、ここでは、大農園主ドン・アレホに支配され、ド田舎の村から出ていけないアウトサイダーたちの物語。
ビジュアル的には老いたオカマの踊りが鮮やかに目に焼きつくけど、ハポネシータ誕生の夜が狂ってて印象的。また彼女自体も、子供なのか何なのかよくわからない不気味さ。
ドン・アレホの犬も良かったなぁ(狂気な意味で)


今ではプレ値がついてる『夜のみだらな鳥』もこの〈水声社 フィクションのエル・ドラード〉で復刊予定だとか。また『別荘』も他社から刊行予定。
養女が書いたドノソの伝記も面白そうなんですが!