E FOR FFFORT AND OTHER STORIES

時間エージェントは、9世紀の宮殿から『千一夜物語』の語り手シェヘラザードを連れ帰ろうとした矢先、見知らぬ世界へ飛ばされた。さらに彼女に恋をされ──ヤング「真鍮の都」に始まり、時と場所を問わず過去を撮影できるカメラを発明し、何本もの“真実の”歴史映画を製作した男たちの物語──シャーレッドの傑作「努力」まで、本邦初訳2編を含む全7編。すべて書籍初収録!

『時の娘』*1の続編的な時間SFアンソロジー第二弾。ヤングがラインナップされてたんで、またロマンティック方向? かと思ったら、今回は色々と味わいが多彩。
初訳2編で、残りは雑誌掲載のみだった作品ばかり、という非常に嬉しい縛りで編まれている。


収録作品
・「真鍮の都」……ロバート・F・ヤング
本物そっくりのコピーを作るため、『千夜一夜物語』のシェヘラザードを誘拐しに来たエージェント。
二人が巻き込まれた冒険は?
ますます、ヤングに対する拒絶反応が(笑)
シェヘラザードを誘拐された衛兵は拷問されるだろうが、じゃねえよ! なんかこの人、強度の恋愛体質で、その他の事の関しては無頓着なんだよなぁ。


・「時を生きる種族」……マイケル・ムアコック
遠未来、故郷を捨てたブルーダーは、バーバー度を目指す。
そこには時計と呼ばれる見知らぬ機械があった。
さらに、週、日、分という単位も……
正直、なんだかよくわからないんだけど、ジャック・ヴァンスっぽさもあり、なかなか楽しい作品。


・「恐竜狩り」……L・スプレイグ・ディ・キャンプ
タイムマシンによって恐竜狩りを案内する会社。
そこは、ある程度の体格がなければ、お断りしていた。
小柄だと大型の銃が扱えないためだが、その理由は?

・「マグワンプ4」……ロバート・シルヴァーバーグ
間違い電話により、二大勢力の時間を股にかけた戦いに巻き込まれてしまった男。
彼は互いの勢力にスパイだと思われ、それぞれの時空を行ったり来たり……
他人の地獄めぐりは、客観的にはギャグに見えてしまう。
しかし、真の地獄はラストにあり……


・「地獄堕ちの朝」……フリッツ・ライバー
目を覚ますと、謎の女に「生きたい?」と訊かれる男。
彼は誰かを殺したのは確実なのだが、全くそれまでのことが記憶にない。
彼女はスパイダーという組織のもので、彼を引き入れにきたらしいのだが……
改変戦争ものの一篇。
ちょろちょろ改変戦争は訳されてるから、まとまったりは……しないだろうなぁ。


・「緑のベルベットの外套を買った日」……ミルドレッド・クリンガーマン
着るわけでもないのに、緑のベルベットの外套を買ってしまった女性。
そのまま行きつけの古本屋で古い日記を見つけるが、奇妙な男にそれを読ませてくれと頼まれ……
ヤングはディスるし、フィニイもだんだけ昔好きなんだよ! と思ってるんだけど、別にラブロマが嫌いなわけじゃないんだよね。むしろ好き(笑)特に後者は結構読んでるし。
この作品はフィニイ的タイムトラベルもので、かつラストが未来に向いてるので非常に口当たりが爽やか。


・「努力」……T・L・シャーレッド
ありとあらゆる時間と空間を撮影できるカメラを発明した男。
彼は、それで歴史上の出来事を撮影し、映画として売りだして大ヒット。
しかし、彼の真の目的は金儲けではなかった……
人類は彼の目標に向けて努力すべきだと思うが、大国はそれを許さず、主人公たちもそれは極めて困難ということを自覚している絶望感。
作者はこれしか訳されておらず、作品数も十作程度だとか。まさに一発屋だけど、傑作。


アタリ揃いのアンソロジーだけど、あえて選ぶなら、「時を生きる種族」「緑のベルベットの外套を買った日」「努力」かなぁ。