THE ARTIST OF THE MISSING

失踪者たちの画家

失踪者たちの画家

何が本当で、何はただの物語なのか? 消えた恋人を探し、孤独な男は監獄、人形工場、裁判所へ流れ着く。虚と実、生と死の境がゆらぐなか、都市の秘密が垣間見え…無類の奇譚小説。

感触は『闇の国々*1に近い。主人公にとっては地獄めぐりに近い展開が、読者にとってはかっこうの街巡り。
その色彩イメージは青灰。
あらゆる失せ物を保管する発見物局や都市の動向を決定する九人の老人(でも、誰も見つけられない)、奇妙な刑が科せられる監獄、失踪者を待つ海水浴場など、煉瓦と騎士ではなく、セメントとお役所で構築されたファンタジー
しかし、その街にはどうも現実感がなく、むしろ、死者の写真、失踪者の似顔絵、生き人形……命ないものの方が、活き活きとし、人格を保有しているように見える。


ついには、画家本人を無視して作品そのものが出鱈目な来歴で有名になり、人形こそが裁判を受ける資格を有する、あらゆる境目が解けていく……