Compliance



『コンプライアンス 服従の心理』鑑賞

2004年、米ケンタッキー州のファーストフード店に警察官を名乗る男から電話があり、従業員だった少女が窃盗の濡れ衣を着せられ、身体検査と称して性的行為を強要された事件を映画化し、権威へ服従してしまう人間の心理を描き出したサスペンス。アメリカのあるファーストフード店で店長を務めるサンドラのもとに、警察官と名乗る男から電話が入る。男は女性定員のベッキーに窃盗の疑いがあると言い、サンドラに対してベッキーの身体検査を命じる。警察官の言うことならばと指示に従ったサンドラだったが……。監督は本作が長編2作目の新鋭クレイグ・ゾベル。

一本の電話だけで、ファーストフード店の女性店員に濡れ衣を着せ、他の店員によって性的暴行までさせたという実際に起きた事件を、ミルグラム実験*1に重ねあわせて描いていく。
だから、ちょっとあざとく感じちゃう点もなくはないんだけど、ある種の密室で、最初から最後までかなりの緊張感を強いられる作品。


おそらく犯人は、何百件も電話をかけているはずで、「18歳の金髪の店員がいるだろ?」→「ベッキーのことですか?」→「ああ、そのベッキーが客の金を盗んだんだよ」という流れだと思われる。
オレオレ詐欺」みたいなもので、客観的に見れば、本部長に確認しろよ、と思うんだけど、冒頭で店長は本部長なしでやろうとする野心が示され、標的になるベッキーもルールを軽んじる姿が映し出されるため、その時点で悲劇に向けて詰んでいる。


また、舞台が大忙しのファーストフード店にすることによって、外部に連絡できないという密室的状況が作られてしまうと同時に、どこにでもある店は全く普通の人間が同じように残酷になれるということも表していて上手い。