CIGARETTES

シガレット (エクス・リブリス)

シガレット (エクス・リブリス)

1936〜38年と1962〜63年とを行き来しながら、ニューヨーク近郊に暮らす上流階級の人々を描く。主要登場人物は13人で、各章には「アランとエリザベス」「アランとオーウェン」「モードとエリザベス」などの章題が添えられ、二人ずつの組み合わせ(夫婦、愛人、父と娘、画商と画家、姉と弟など)に焦点を当てながら話が進む。多くの場合、尻取りのような形式で、前の章で言及のあった人物の一人が次の章に引き継がれる。主要人物間の入り組んだ関係を、まるで精緻なパズルのピースを一つ一つ提示するかのような形で見せつつ、謎と解答を与えながら読者を引っ張っていく。物語はさながら連続テレビドラマのようで、各章ごとに興味深い事件や関係が取り上げられる(あるいは同じ事件が違う角度から眺められる)。「驚くべき傑作。19世紀の大河小説のように筋に含みを持たせつつ、モダニズム小説に劣らぬ独創性を備え、読みやすさと巧みな仕掛けとが、まれな形で結びついている」(エドマンド・ホワイト

ウリポ、という言葉に身構えることもなく、ひじょうに読みやすい小説。
各章で人物や出来事が少しづつ重なり、「AとBは夫婦で、AとCは姉妹で、BとCは不倫」的な人間関係はアメリカのTVドラマのよう。
長くはない各章を読み進めるにつれて、重要アイテムである肖像画の素性、それぞれの思惑や行動の詳細が補完され、徐々に顕わになっていく。


と、前述したように、至って普通の小説にみえるんだけど、あとがきによると、あるアルゴリズム(詳細不明)の沿って書かれたものらしく、それがウリポたる所以なのかな。
タバコが象徴的に出るわけでもないのに、この題名の由来は、作中で精神を病むキャラクターの幻聴による。しかし、この幻聴もまるで意味がわからず(そういう意味ではリアル)、また、それは文字の羅列の中に現れてくる単語。この意味をなさい文字の羅列が作者のいうアルゴリズムにつながるんじゃないかと思う。まぁ、謎解きするつもりはないけど(笑)