鄢太陽賦格

フーガ 黒い太陽 (台湾文学セレクション)

フーガ 黒い太陽 (台湾文学セレクション)

我が子よ、私の黒洞(ブラックホール)こそおまえを生みだした子宮──。母と娘の葛藤物語を装うリアリズム風の一篇からはじまり、異端の生命・吸血鬼、さらにはSFファンタジーの奇々怪々なる異星の存在が跋扈する宇宙空間へ。クィアSF小説作家による雑種(ハイブリッド)なアンソロジーの初邦訳。中国語版『鄢太陽賦格』も台湾にて同時刊行。


 収録作品
・「玻璃の子宮の詩」
・「月での舞踏」
・「星光が麗水街を横切る」
・「暗黒の黒水仙
・「肉体錬金術
・「髑髏の地の十字路」
・「サロメの子守歌」
・「唯一の獣、唯一の主」
・「勇将の初恋と死への希求」
・「白夜の詩篇

紀大偉*1を読んでたこともあるせいか、台湾ってクィアSFしかないわけじゃないよね?
それとも、中国本土でその手のものが出せない作家が台湾に流入してきているとか?


クィア系作品て、あんまり得意じゃないんだよなぁ。
物語上、不必要に性描写が多い気がして。まぁ、それがなかったら他の「ノーマル」小説と見分けがつかないから、「クィア」としてのレゾンデートルなのかもしれないけど。


それとは別にして、目次を見て嫌な予感が……
「中二臭ぇ……」
作者の英語PNが〈Lucifer Hung〉の時点でヤバイとは思ったんだけど。


その悪寒どおり、内容は、魔界都市〈新宿〉っぽかったり、士郎正宗っぽかったり、『アンダーワールド*2っぽかったり。現に作者は日本のマンガや英語圏のSFに造詣が深いとか。
ただ、それらがかなり透かして見えちゃって、どうにもハマれず。
好意的に書くなら、中国的な息の長い文体で、遠未来の歴史を、現在のオタクカルチャーのガジェットを借りて描いている、という感じかな。また、作者がトランスジェンダー(?)だからなのか、キャラクターの性別が捉えきれないのも特徴。
それが面白いかどうかは違う話なんだけど。
とにかく最後までハマれず、終盤になって、『攻殻機動隊*3というよりは『仙術超攻殻オリオン』*4か、と脳内変換したら幾分読みやすくなったんだけど、時すでに遅し。もう一度読む元気はないなぁ。


SFやダークファンタジー的な作品よりは、直球にクィアな「月での舞踏」が面白かったかな。