Il deserto dei Tartari

読書会に合わせて着手。
『神を見た犬』*1はじめ、短篇は読んだことあるけど、長篇は初めて。

辺境の砦でいつ来襲するともわからない敵を待ちつつ、緊張と不安の中で青春を浪費する将校ジョヴァンニ・ドローゴ。神秘的、幻想的な作風でカフカの再来と称される、現代イタリア文学の鬼才ブッツァーティ(一九〇六〜七二)の代表作。二十世紀幻想文学の古典。

ホントに何も起こらない、というのがこの物語のあらすじ。
基本、役に立たない砦から、題名にもなっている砂漠を眺めてるだけなんだけど、飽きさせない筆力は確か。


作中では、時代も場所も明示されていない。
タタール人も砂漠も、イタリア人にとっての「どこか遠い場所」ということなんだと思う。
そんな辺境に赴任し、現状と将来への不安に囚われた青年将校ドローゴが主人公。


仕事をこなしているうちにあっという間に時間は過ぎ、まだ若いからいつでも転職できるさ、と気づけば30代。
その時間感覚が文章に如実に表されていて、初出勤のシーンは長く、異常事態が起きる瞬間も長く、しかし、老いてからの勤務シーンは短い中で時間が過ぎる。人生そんなもんだよね、と30〜40代サリーマンは残念な気分になること必至(笑)
きっかけがあれば(タイミングが来れば)なんて言ってるうちに、それが来たときは遅すぎる。身につまされる方は多いかと。


しかし、ドローゴが不幸だったかというと、そうでもない気がするんだよね。
漫然と何事も無く過ごし、人生の最後で国の一大事に遭遇し、しかも、その後に起きる戦争の悲惨さだけは見ないで済むのだから。


どこが? と言われても困るんだけど、『プリズナーNo.6*2とか『逆転世界』*3に感触が似ている印象。出て行こうにも、場所と仕事に縛られて動けないのと、そのお役所感、正体不明のルールなところ? なのかなぁ。


北からの侵略は、クマ!? クマなの!? と期待してしまった(混ざってます*4


まぁ、結論は、若者よ、青春を無駄にするな、ということですよ。