伝説の「どりこの」
- 作者: 宮島英紀
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/11/11
- メディア: 単行本
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「どりこの」――かつて、この国を席捲した飲み物。旧陸海軍でも用いられた滋養飲料を大々的に売り出したのは…なんと講談社だった。「聖水」と呼ばれるほどの人気を博したが、太平洋戦争の激化にともない製造中止に。戦後、一時は復刻されるも、開発者の死と共に消えていった…。誰がどうつくったのか?なぜ昭和を代表する飲み物になったのか?どうして現代では製造できないのか?「どりこの」ミステリーから、昭和の新たな姿が見える。
この、「どりこの」なる飲み物のことは全く知らず、本屋で見かけて、てっきり『Boilerplate』*1みたいなモキュメンタリーかと思ったくらい。
図版多数で見てるだけでも楽しいんだけど、その写真が迫力ありすぎて、やはり作りなんじゃ……という疑いが頭をもたげるほど(笑)
貧血、感冒、滋養強壮、食欲増進、ありとあらゆる症状に効き、瀕死の重病人でさえ生き返らせたという。その味は非常に甘く、戦前の日本で大流行したという。
だが、太平洋戦争により製造が中止され、そのままこの世から消えてしまった飲み物。
この説明でも、やはりフィクション臭い。なんか『鼻行類』*2みたい(笑)
そもそも、「どりこの」という強烈に人工物臭い名前が!
しかしながら、実在の飲料で、作者は資料や関係者にあたって探っていく。
なんと、販売元は講談社!
なぜ、出版社が!? はたして誰が作ったのか!? そして、明かされる驚愕に名前の由来!
後半は「どりこの」ではなく、強烈な野間社長と出版ではない講談社史、そして、やはり変わり者の開発者である博士のエピソードになっていくんだけど、それもまた非常に面白い。
まぁ、とにかく当時の写真が凄くて、「予算が使い切れなかった」というほどの怒涛の宣伝。のらくろも飲んでますよ。
日本で知らぬものがいなかったほどなのに、全くと言っていいほど、現在では幻の存在。一つの大衆的飲料から表舞台には上がらない昭和史を探り、また、その消滅は楽園の終焉にも見える。
オススメ。