A CIVIL CAMPAIGN

任務外作戦 上 (創元SF文庫)

任務外作戦 上 (創元SF文庫)

任務外作戦 下 (創元SF文庫)

任務外作戦 下 (創元SF文庫)

まさか、前回から1年で邦訳が出るとは!

皇帝グレゴールの結婚式を前にバラヤーに戻ったマイルズは悩んでいた。コマールで出会った魅力的な女性エカテリンに求婚したい。だが相手は夫を亡くしたばかり、あまりに早すぎるのではないか。とりあえず搦め手から攻めようと、屋敷の庭園デザインを彼女に依頼することにした。そうすれば打ち合わせと称して会うことができるし、警戒されることもない。そして彼女が落ち着いたころに申し込めばいい。計画は完壁なはずだった。ところが、いつのまにか求婚者たちが、彼女のまわりをうろつきはじめたではないか。果たしてマイルズの恋の行方は?
マイルズのクローンマークも、恋人であるコウデル力家の四女とともにバラヤーに戻ってきた。虫が体内で作り出す虫バター事業をはじめようとするのだが、肝心の虫の見映えの悪さから、評判はいまひとつ。なんとか売り込もうと秘策を練るが……。一方マイルズの求婚計画は、順調どころか散々なありさま。おまけにふたつのヴォルー族の継承問題という、政治上の駆け引きに巻き込まれ、マイルズ自身に火の粉が飛んできた。マイルズはこの苦境を乗り切り、愛する人と結婚できるのか? 後日譚にあたる「冬の市の贈り物」も収録。ファン必読の一冊。

これまで、知略とユーモアと口先で、あまたの戦場と陰謀をくぐり抜けてきたシリーズの、ある意味総決算とも言える作品。
しかも、オールスターキャストが贈る今作は、ミリタリーSFにも関わらず、ほとんどアクションシーンのないロマンティック・コメディ!


これが、シリーズ最高といっても差し支えないほどに面白い。
もうドキドキ、ワクワク、ニヤニヤが止まらない。
う〜ん、これは、20年以上彼らに付き合ってきたからこそのご褒美かもしれないなぁ。あのマイルズが結婚! というだけで、嬉しいわけですよ。個人的には、エリとくっついて欲しかったんだけどさ(笑)


古臭い貴族階級が残るバラヤーは、『高慢と偏見』みたいなロマンティック・コメディと食合せがいいのは当然なんだよね。
皇帝グレゴールの結婚式が迫る一方、マイルズは前作*1で出会ったエカテリンに求婚したいが、策略を練りすぎておかしな方向に。
そんな中、上巻のクライマックスは「イリヤンおじいちゃん、それ言っちゃダメ〜!」
さらにマークが新事業として持ち込んだ虫バターがドタバタのさらなる潤滑剤に。名前からして、こちらもやばそう(笑)


また、旧貴族社会と言えば血統なんだけど、作者も意図して、それぞれのキャラクターのロマンスと後継、というテーマをもう一つの軸にしている。SFにおける旧貴族社会だからこその、次世代のあり方が描かれている。
全体的にコメディ色は非常に強いんだけど、後半の国守問題は法廷ものとして読みでがある。


これまで、外交や極秘作戦という職務がメインだったのに対して、今回はあくまでプライベート。そのため、キャラクターたちの見せ場というより、人間性の掘り下げが強くなされており、おなじみの彼らの魅力がさらに増している。
どのキャラもいいんだけど、やはり、決めるときは決める(色んな意味で)イリヤンが最高。いや、バラヤーの黒幕レディ・アリスやアラールの涙も捨てがたい。イワンもグレゴールもいいしなぁ。
前作では、エカテリンは面白みがなく、マイルズは彼女のどこに惚れたの? と思っていたけど、今作においては、強く賢く感情豊かで、マイルズの独特のユーモアにも付き合える、非常に魅力的な女性として描かれている。
シリーズ読者としては、後日譚でエレーナとタウラの顔がまた見られてのがホントに嬉しい。


この晴れの日を見るために、20年間付き合ってきたと言っても過言ではない。
あ〜、楽しかった。