LEVIATHAN

凶獣リヴァイアサン〈上〉 (創元SF文庫)

凶獣リヴァイアサン〈上〉 (創元SF文庫)

凶獣リヴァイアサン〈下〉 (創元SF文庫)

凶獣リヴァイアサン〈下〉 (創元SF文庫)

発売当時、イロモノ臭いなぁ、とスルーしてきたんだけど、読んだ人に言わせると、意外に面白いということなので着手。

白夜につつまれたアイスランド沖の孤島。その地下洞窟では民間の防衛産業と合衆国政府が、究極の生物学的軍事抑止力を秘密裏に開発していた――暗号名“リヴァイアサン”。コモドドラゴンに遺伝子改造を施した巨大モンスターである。だがそれは開発陣の予想を超えた能力を発現させ、地下深くで暴走をはじめた。しかも島には、不測の事態にそなえ、怪物が洞窟を脱出したなら起動するよう、核自爆装置がセットされていたのだ。タイムリミットは24時間。冒険小説の俊英が贈るモンスター軍事SFの超大作登場!
猛火を吐き暴走するリヴァイアサンを、なおも保全しようとする国家安全保障局。だが怪物は、地下回廊を抜けて大西洋に脱出しようとしている。開発陣と保安要員たちは国家命令にさえ反旗を翻し、地下深い迷路のような洞窟のなかで、英知を尽くして一進一退の攻防を繰り広げていた。そして彼らのもとに加勢に駆けつけたのは、島の孤塔にひとり暮らす、強大な知性とパワーを秘めた巨躯の北欧人だった!太古からの伝説の名で呼ばれるこの怪獣を、彼らはいかにして打ち倒すのだろうか? 決戦のときがせまる!

いや、やはりイロモノだったんですが(笑)
ただ、異様にリーダビリティよく、確かに面白い。


現代が舞台なのに、ドラゴンとマイティ・ソーが闘うって!


非常にハリウッド映画的ヴィジュアルに脳内補完が容易なんだけど、この作品の一番の肝が、実際の映画化を激しく拒んでいる。
特殊部隊と、鋼鉄さえ溶かす炎を吹く怪獣が戦うのはいいんだけど、2メートル半の名前も見た目も雷神トールは著しく現実離れしすぎていて、寒くならずに実写化するのは結構難しいと思うんだよね。
かと言って、彼を省くか、アレンジしちゃうと、作品の魅力をスポイルすることになっちゃうよなぁ。
そういうわけで、小説世界でこそ成立する、物語内リアリティのある作品。


出し惜しみすることなく、最初の方からリヴァイアサンは大暴れし、予想を上回る身体能力、無能な上司、通信途絶、核自爆装置のカウントダウン、と危機また危機のオンパレード。
それに対する巨人トールが凄すぎて、笑えるレベル。でも、彼が戦斧でリヴァイアサンと対決するシーンはかなり滾るものがある。


一番面白かったのが、キリスト教系の出版社から出た小説ということ。
確かに、トールは敬虔なキリスト教徒なんだけど、宗教臭さはあまり感じなかったけどなぁ。『キリストのクローン』*1と並んでるということ?


お固い文学の合間にオススメ。怪獣と巨人好きにも。
それにしても、ハギンズの訳書って、みんな同じあらすじじゃない?