THE HALLOWED HUNT

影の王国 上 (創元推理文庫)

影の王国 上 (創元推理文庫)

影の王国 下 (創元推理文庫)

影の王国 下 (創元推理文庫)

〈五神教シリーズ〉第三弾

聖王が統べる森の国ウィールドで、第三王子が死んだ。手篭めにしようとした侍女に殺されたらしい。王子の遺体を都に運ぶべく派遣されたイングレイは、殺人者だという娘イジャダを見て驚愕した。輝くばかりの美しさ。それだけではない、彼女は古代ウィールド戦士のごとく、その身の内に豹の精霊を宿らせていたのだ。その昔、父がおこなった儀式により、自らも狼の精霊を宿しているイングレイは、彼女に興味を抱く。ヒューゴー、ネビュラ、ローカス賞を受賞した『影の棲む城』に続く、〈五神教シリーズ〉第三弾。
王子を殺したイジャダを護送する途中、イングレイは何度も彼女を殺そうとする。だが、それは彼自身の意志ではなかった。それどころか、彼の内なる狼の仕業でもない、何者かが彼に植えつけた呪だった。だれが、なぜイジャダを排除しようとしたのか? さらにイングレイは、都を前に一行を迎えた自分の従兄弟であり聖王の王女の夫であるウェンセルにも、獣の精霊が憑いていることを知る。穢れとして神殿から排除される自分たちのような存在が、なぜ三人も揃ってしまったのか。折しも都では病を得ていた聖王の容態が悪化していた。人気シリーズ続編登場。

前作*1から4年ぶりの刊行で、すっかり記憶にないんだけど、物語はこれまでと場所も時代も違うので、気にせず読むことができる。


際立ってユニークな点はないんだけど、手堅く読めるファンタジー
ただ、面白く読めるだけに、もう半冊分くらい長くても良かったんじゃないかなぁ。
イングレイが都までイジャダを護送するまでが結構長く、都についてからがかなり性急に色々起きる印象がある。第三王子の殺人、次期王位継承問題、主人公たちに憑いた精霊、とバラバラのエピソードが自然とラストでまとまっていくストーリーテリングは巧みだと思うけど、ちょっと配分が悪い気がする。特に、王位継承に関する陰謀はもっと読みたかった。
また、魅力的な脇役が多いのに、彼らに割かれる紙幅が薄いのも残念。それなのに印象的だから上手いんだろうけど。終盤の、イングレイたちが不在時の都での彼らの様子とかあればなぁ。ジョコル王子とか、凄くいいキャラなのに。


〈五神教シリーズ〉はこれ以降は書かれていないとか。
個人的には〈死者の短剣〉*2より好きなので残念。