月を見つけたチャウラ

月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)

月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)

硫黄鉱山での重労働の果てに暗い坑道を抜け出ると……静かで深い感動に包まれる表題作。作家が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」など15篇を収録。シチリア出身のノーベル賞作家が、突然訪れる人生の真実の瞬間を、時に苦々しく時にユーモラスに描く短篇集。


収録作品

  • 「月を見つけたチャウラ」
  • 「パッリーノとミミ」
  • 「ミッツアロのカラス」
  • 「ひと吹き」
  • 「甕」
  • 「手押し車」
  • 使徒書簡朗誦係」
  • 「貼りついた死」
  • 「紙の世界」
  • 「自力で」
  • 「すりかえられた赤ん坊」
  • 「登場人物の悲劇」
  • 「笑う男」
  • 「フローラ夫人とその娘婿のボンツァ氏」
  • 「ある一日」

奇想と分類される作品とシチリアの生活を舞台にしたものと、2種に大別できる。
しかし、そのどちらも、相手がそう考えて(企んで)いると称して、実は自分のネガティブな考えを投影しているに過ぎない、というテーマが多い。
もの言わぬ動物に、自身の醜い心情を胸像として語らせる「ミッツアロのカラス」「手押し車」。寡黙な信仰者の真意を周りが曲解している「使徒書簡朗誦係」。自分の小説に出てくるキャラクターと面接をする「登場人物の悲劇」。互いに相手が狂っていると思いながら、相手を思いやり続ける夫人と娘婿「フローラ夫人とその娘婿のボンツァ氏」など。


お気に入りは異色短篇集に入りそうな「登場人物の悲劇」「フローラ夫人とその娘婿のボンツァ氏」「ある一日」あたり。特に「フローラ夫人とその娘婿のボンツァ氏」に出会えただけでも、読んだ価値があった。