THE WOMAN

ザ・ウーマン (扶桑社ミステリー)

ザ・ウーマン (扶桑社ミステリー)

よもや、カニバル年代記になっているとは……

弁護士のクリスは、森でハンティングの途中、小川に浸かる上半身裸の女を見つけた。女は大怪我を負い、ひどく汚れていた。その野性丸出しの姿に魅せられたクリスは、罠を仕掛けて、女を捕らえる。クリスは自宅の納屋の地下室に女を監禁するが、それは家族をも巻き込む惨劇の始まりだった――。鮮烈なデビュー作『オフシーズン』、その続編『襲撃者の夜』のキャラクターを引き継ぎ、鬼才ケッチャムが気鋭のホラー映画作家ラッキー・マッキーとともに作り上げた衝撃作。後日譚となる短編「カウ」を併録。

同名映画の原作、というわけではないのかな? 監督が共著なので、『2001年宇宙の旅』みたいな関係?


傑作『オフシーズン』*1の続編と期待していたのに『襲撃者の夜*2はイマイチハマれなかったんで、これはどうかと尋ねたら、期待していたのはこれですよ! 正直『襲撃者の夜』はさっぱり覚えてないんで、これが第二部と認識しちゃってもいいかと(暴論)


食人族の生き残りウーマンのパートから始まり、続いてアメリカ的なガーデンパーティのシーンへと続く。ケッチャム読者はこの後の展開に期待しちゃうんだけど、どうにも様子がおかしい。裕福な家庭に見えながら、その中は暴力と女性蔑視の変態父親に恐怖で支配されている。そして、二大怪獣対決に向けて、テンションが高まっていく……


期待通りの残酷&変態描写は出て来て面白いんだけど、これまでの作品に比べると軽いというか、展開が早く、ホルモン焼き食べに行ったつもりがファーストフードだった、みたいな? サクサク読み進められる上に、嫌な後味がないんだよね。普通ならそれでいいのかもしれないけど、ケッチャム作品ではそれはマイナス要因。
また、監督と共著ということもあるのか、これまでの作品が定点カメラの前で惨劇が無機質に写っているようだったのに対して、今回はなんというかカメラが映画っぽい。
この二つが合わさって、普通のスプラッタームービー風で、ズシッと肺腑に来る嫌な読後感がない。また、これまでが超人(倫理を遥かに超えたという意味で)VS一般人という構図が多かったのに対して、今回は超人VS超人なので、それも一助になってるのかな。


後日譚「カウ」も収録されていて、個人的にはこちらの方が面白かった。これも共著かはわからないけど、無関係の人間が巻き込まれて、嫌なラストは期待していたケッチャム味(笑)