THE VOICE IN THE NIGHT and Other Stories

夜の声 (創元推理文庫 (536‐1))

夜の声 (創元推理文庫 (536‐1))

毎年、夏になったら読もうと思い続けてきて、ようやく着手。

若くして船員生活を送った二十世紀怪奇小説の鬼才W・H・ホジスンは、異界への憧憬と恐怖を大海原に求めた。本書は、闇の海から聞こえてくる奇妙な声が、とある島の怪異を語る傑作「夜の声」をはじめ、巨大な口と触手を持つ海の魔物が襲いくる「熱帯の恐怖」、死の海サルガッソーに入りこんだ船を待ち受ける、海藻の下にひそむ恐怖を描いた「グレイケン号の発見」のほか、海に浮かぶ石の船やカビにおおわれた廃船にまつわる海洋奇譚全七編に、〈カーナッキ〉シリーズの先駆をなす「水槽の恐怖」を併録した。


 収録作品
・「夜の声」The Voice in the Night
・「熱帯の恐怖」A Tropical Horror
・「廃船の謎」The Mystery of the Derelict
・「グレイケン号の発見」The Finding of the Graiken
・「石の船」The Stone Ship
・「カビの船」The Derelict
・「ウドの島」The Island of the Ud
・「水槽の恐怖」The Terror of the Water Tank

ネチョッというか、ズブッというか、ボフッというか、そんな感じ(笑)


海を舞台にした怪異譚を集めているんだけど、幽霊などではなく、まだ人間の知識や科学が追いついていない海の現象が相手。
そこに現れる幽霊船は鬼火が灯っているようなものではなく、カビや得体の知れないヌルヌルの覆われ、頼まれても触ったり足を踏み入れたくない。
大袈裟な描写はないが、生理的嫌悪感は半端無い。関東近郊の汚い海って、なんかヌルヌルしてるじゃない。それを文字化した感じ。だから海は嫌いなんだよ(笑)


正直、似たような話が多いんだけど『マタンゴ*1の原型になった「夜の声」は何度読んでも傑作。
「熱帯の恐怖」は『ザ・グリード*2じゃん!
根源的な恐怖は古びず、後世の作品にもそのモチーフは見て取れる。


個人的にはホジスンの短篇では「ミドル小島に棲むものは」*3が一番怖いと思ってる。「水槽の恐怖」を省いて、これを入れれば海洋怪異で揃ったのに。