SHIP BREAKER
- 作者: パオロ・バチガルピ,鈴木康士,田中一江
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/23
- メディア: 文庫
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石油資源が枯渇し、経済社会体制が激変、地球温暖化により気候変動が深刻化した近未来アメリカ。少年ネイラーは廃船から貴重な金属を回収するシップブレイカーとして日々の糧を得ていた。ある日ネイラーは、超努級のハリケーンに蹂躙された後のビーチに、高速船が打ち上げられているのを発見する。船内には美しい黒髪と黒い目をした少女が横たわっていた……。『ねじまき少女』でSF界の頂点に立った新鋭が描く冒険SF
個人的には、バチガルピ作品の中では、下の方だなぁ。
文明が崩壊し、その残滓で生き延びている人類……とはなってなくて、海面上昇やメガハリケーン、北極融解などによって21世紀現在の文明は痕跡しか残っていないけど、それがちゃんと過去(伝説とかではなく)として咀嚼された世界が広がっているのは上手いと思う。
ただ、そこで展開される物語がまるで『ラピュタ』まんまっていうのがなぁ。その未来における、ストリート・チルドレンの生活が延々と続いても辛かったですが(笑)
解説でも挙げられているけど、スロスが全く出て来なくなっちゃうのが不満。同じ出さないなら、タイフーンで死んだことにしても良かったんじゃないかなぁ。YAとはいえ、他作品ではあまり感じられなかった粗が気になった。
一方で、最強最悪の敵が父親というのが面白い。乗り越えるべき存在、とかそんな甘いことでなく、ホントに敵。YA云々ではなく、かなり印象的な敵に仕上がっている。
それと、主人公の保護者代わりになるのが、獣の遺伝子を持った半人のトゥール。
極論すると、主人公は自分以外は信用できず、ヒロインさえもどこまで本当のことを言っているのかわからない。さらに、この二人の特徴的なキャラクターは近寄りがたく、それが物語のフックにはなっている。
トゥールが再登場する続編もあるようなので、それは気になる。
YA的に教訓を読み解くなら、手に職をつけろってこと?(笑)