Le Voyage dans la Lune

『メリエスの素晴らしき映画魔術』&『月世界旅行』



『メリエスの素晴らしき映画魔術』はドキュメンタリー。
前半はジョルジュ・メリエスを中心とした映画勃興期を映し出される。
思ってた以上に『ヒューゴの不思議な発明*1で語られていて、出てこないのは自動人形だけといっても過言ではないくらい。
彼は、駅のおもちゃ屋でかつて撮った作品のスケッチをしていたそうだし。
途中、メリエスの作品が挿入されるんだけど、純粋に笑えます。当時の人は、特撮は全く未知の体験だっただろうから、びっくりしただろうなぁ。


後半は、発見されたカラー版(彩色版)『月世界旅行』の修復作業。これがかなり面白い。
カラー版フィルムは状態が悪く、欠けている部分を他の白黒版と見比べ、まず一本の作品にまとめる。それから、継ぎ接ぎした部分をデジタルで彩色。
今なら、完全に綺麗にすることも可能だろうけど、そこはちゃんと真面目なお遊びでキズなども残している。


で、月世界旅行はその復元カラー版。
チェロ奏者・坂本弘道氏による伴奏つき上映ということもあって、まさかのレイトショーで座布団が!
個人的には、もうちょいコミカルなイメージだったんだけど、なかなかいい体験でした。


肝心の映画の方は、場面場面は知ってたけど、ちゃんと観るのは初めて。
絵画が動いているような感じなので、どこを注視すればいいのか迷うほど。当時のカラーは、一コマずつ絵の具で彩色しているため、なんとも言えない味わいがある。
月にロケットが刺さることで有名な作品だけど、刺さったところから垂れてるの、血!? ウォレスとグルミット的にチーズみたいに黄色いものがとろけているのかと思った(笑)
しかし、彩色で一番のカルチャーショックは、冒険者たちが月面から「地球の出」を見るシーンがあるんだけど、その地球が黄色く塗られていたこと。青っていう発想がない、まさに我らの知らない世界を見ることができる。


物語は、超スチームパンクですよ。
メリエスの活躍自体が我らから見ればスチームパンクなのに、更に彼がスチームパンクを撮っている! これを超スチームパンクと言わずして、なんと呼ぶ!
月に行くにもシルクハットと傘は必須。しかし、女性キャラは仰々しい服ではなく、お色気路線なのは現在の作品も見習うべきだと思う(笑)
さらにスペースオペラ的展開という豪華さ! 月牛が出てくるのはこれじゃないのか。


映画好き、特撮好き、SF者は必見の作品でしょう。
ヒューゴの不思議な発明』を見た人にもオススメ。