THIRTY-THREE TEETH

三十三本の歯 (老検死官シリ先生)

三十三本の歯 (老検死官シリ先生)

シリ先生シリーズ第二弾。

時は1977年、東南アジアの小国ラオス。国で唯一の検死官である72歳になるシリ先生は、灼熱の太陽のもと今日も死体と格闘していた――。自転車に相乗りした二人の謎の死人が運ばれてきたのを皮切りに、猛獣に首を岐みつかれ息絶えた女性が続けて現れるなど不可解な事件が頻発する。黒焦げ死体がみつかった古都ルアン・パパーンに赴いたシリは、魔力的なその地で三十三本の歯の秘密を知るのだったが……。現世と霊魂の異世界が渾然一体となった摩訶不思議な世界で繰り広げられる、霊魂ドクター面目躍如の活躍。ヒューマンな魅力あふれる極上のユーモア・ミステリー。

まず、物語に入る前にキャラクター一覧を眺めると、愛すべきデツイがいない! ドゥーイって誰だよ! と憤っていたら、どうやら同一人物。あとがきによると、ドゥーイが正しいとか。


前作の感想で、シリ先生は幽霊が見える、と書いたけど、それはちょっと間違っていました。
シリ先生を主体に「見える」と書くと、それは彼の直感を表現したものかもしれないし、夢か妄想ということもありうる。
しかし、ラオスには異界が存在し、それは木立の向こうや洞窟の奥など、すぐ隣にある。シリ先生は他の霊能者同様にそことコンタクトをとれるのだ。役人でさえ、霊を政治的に利用しようとする。霊魂召喚マニュアルに大爆笑。


前作では、メインとなる事件と異界が分離気味で、先生の霊媒体質が事件解決に役立つ程度。ところが、今回は事件そのものが呪いの筺や獣人が原因であり、逆にシリ先生の医学知識がオカルトの解決に対して補強する側に回っている。
まさに、現代科学も武器に持っているウィッチ・ドクター。


物語は、因果の物語。
しかし、因果応報はあくまで受け手としての人間側の問題であって、人外の世界では別の法則が働いており、それが事件に結びついているのが面白い。
それを解決するには、人間側が向こうのルールに歩み寄らなければならない。チョコレートのエピソードは非常に悲しいけど、そのしっぺ返しは痛快とも言える。
また、王家を暴力的に退かせ、市民を監視する社会主義になったラオスにも激烈な因果応報が待っているのでは……と思わなくもない。
ドゥーイの頑張りも報われて欲しいなぁ。


是非、早く三巻を!