VALKOINEN KUOLEMA

白い死神

白い死神

新刊は、基本的に予定通りに買ってるんだけど、珍しく衝動買い。
ノンフィクションはリアル書店に行かないとチェックが難しいなぁ。

1939年11月、第1次ソ連フィンランド戦争“冬戦争”。100万のソ連軍に対し、迎え撃つフィンランド軍はわずか25万。圧倒的劣勢の中、最も激しい戦いの地となったコッラー川において、542名のソ連兵を狙撃するという前人未到の戦果を上げたシモ・ヘイヘ。その驚異的な射撃技術を獲得した生い立ち、敵狙撃手との一瞬を争う駆け引きの模様、さらには、彼を支えたフィンランド軍の傑物たちとのエピソードも紹介―。詳細な資料が一切無かった“白い死神”、その伝説が今明らかになる。

542人という史上最大の戦果をあげたフィンランドのスナイパー、シモ・ヘイヘ(ハユハの方が原語には近いとか)を題材にしたノンフィクション。2002年まで存命で、彼自身にもインタビューしている。
ミリタリーには明るくないんで、こんな人とは過分にして知らず。戦争を賛美する気はないけど、スナイパーって、カッコよさを感じちゃう。542人という数字は、本人曰くサブマシンガンでの数は誇張されているとも、非公式では800人以上を狙撃しているとも伝えられているんだけど、なんにせよ卓越した、史上最高のスナイパーの一人であることは間違いなさそう。しかも、スコープ使ってないんだよね。


最近読んだノンフィクションと比べると、正直言って小粒で、貼った付箋も少ない。
でも、恥ずかしながら、第二次世界大戦はドイツ、イギリス、ソ連といった大国のイメージしかなかったんだけど、無論ヨーロッパ全土が戦場と化していたわけで、その前哨戦のような第1次ソ連フィンランド戦争、通称“冬戦争”を知ったのは個人的収穫。一面の銀世界の中のため、血生臭さはないんだけど、まさにベトナム戦争のような様相を呈する激戦。


ヘイヘ自身は口数少なく、孤独を厭わない性格だったようで、それは文章からも伝わってくる。いかにも寡黙なスナイパーというキャラクターなんだけど、エキセントリックさもなく、文章だとちょっと面白味は薄い。
その代わり(と言うのもなんだけど)予備役少尉ユーティライネンが、我らがノンフィクションに求める非常に面白キャラ(笑)戦士になった経緯に始まり、彼が中佐に怪我の様子を訊かれたやりとりや従卒をひな鳥と呼んでいたり、エピソードは事欠かない。少佐から電話があったときのエピソードは傑作。


ヘイヘは生涯独身を通すんだけど、それが元来の性格だったのか、戦争の影響なのかはわからないんだけど、晩年は穏やかに過ごした事実は、ほっとする。