グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇

グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇

グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇

19世紀〜20世紀初頭のパリで演じられた残酷劇、通称グラン=ギニョル。
七つの戯曲が訳され、巻末には六〇本のあらすじ、当時の写真やポスターも収録されていて、グラン=ギニョルという言葉を聞いたことがなくても、この一冊を読めば、間違いなく通ぶれる(笑)


どのような作品が載っているかが気になるかもしれないけど、表紙が全てを物語っている。何かはわからないけど、明らかにいかがわしい事態が起きているイラストにゾクゾクしちゃうた方には是非オススメ。

収録作品
「闇の中の接吻」モーリス・ルヴェル
「幻覚の実験室」アンドレ・ド・ロルド/アンリ・ボーシュ
「悪魔に会った男」ガストン・ルルー
「未亡人」ウジェーヌ・エロ/レオン・アブリク
「安宿の一夜」シャルル・メレ
「責苦の園」ピエール・シェーヌ
「怪物を作る男」マクス・モレー/シャルル・エラン/ポル・デストク

ストーリー自体はたわいないものが多く、ラストにもう一捻り欲しいものばかり。しかし、観客が求めていたのは残酷だったり、ショッキングな描写。この、目の前で演じられる舞台というのが非常に重要で、最近のトーチャー・ポルノ並に(それ以上?)刺激的だったんじゃないかなぁ。
皮剥の演出方法やギロチンの舞台装置についての注意書きなども記されているのが面白い。


現実では目をそむけるほど嫌だけど、お話ではみんな耳年増になるよね! 硫酸かけられたり、頭剥がれたりするの。大変楽しませてもらったんだけど、何やら既視感が。
天知茂明智小五郎がまず頭に浮かんだんだけど、それよりも、都市伝説が与えてくれる皮膚感覚。昨日や明日ではない、今日自分の身に起きるかもしれない現実と地続きの恐怖譚。
個人的には、「オルレアンのうわさ」*1と触感が似てるなぁ、という印象。
まさに石畳の上の怪談。


完全なオカルト話は少なく、19世紀〜20世紀初頭ということで、恐怖の対称が精神病、非白人、犯罪、科学と実在するけど理解出来ないものになっているものが多い。
都市伝説とどちらが先かわからないけど、少なくとも影響はあるんじゃないかなぁ。


お気に入りは「闇の中の接吻」「責苦の園」「怪物を作る男」